今だからこそ空想旅行に出かけてみませんか!

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旅好きの人には特にお勧めの空想旅行!

新型コロナウイルスの影響で家から出ることができない単身者や高年齢者に空想旅行の楽しみ方を伝えたい。
もちろん海外旅行好きの女性にも楽しんで頂きたい。

空想旅行とは

空想旅行とはVRのような仮想現実を言っているのではなく、頭の中で空想しながら旅行をイメージすることだ。

元々旅行の楽しみ方は三つに分けることができる。
旅行にいく前の計画段階と実際に旅行に行っている間、そして旅行から帰ってからの思い出し反省期間だ。
その中でも最も楽しいと感じるのが旅行に行く前の計画段階なのは、多くの旅行好きの人も語っている。

旅行前が楽しいと感じるのは、「これから始まる非日常的なストーリーの期待感」や「何が起こるか分からないスリリングなドキドキ感」、「楽しい体験や人との出合いなどを想像したウキウキ感」だ。

このような幸福感は、小説を読んでいる時に自分だけが入り込む想像の世界観と同じような感覚だ。
空想旅行はこの計画段階の楽しさを味わうもので、実際に行った旅行と同じように記憶に留めることができる。

空想旅行を楽しむためのルール

空想旅行を最大限楽しみたいのなら先ずはルールを作ることだ。
私がお勧めするルールは、空想旅行に使えるツールを制限することだ。

使えるものは、グーグルマップのような地図ソフトと文章の多い旅ブログや旅行ブックだ。
逆に使ってほしくないのが、旅行写真サイトやYouTubeなどの旅動画だ。

なぜ写真や動画を使わない方が楽しくなるのかは、「百聞は一見にしかず」の逆の価値観にある。
写真や動画を見ることによって一瞬にして想像力を断ち切ってしまうからだ。

頭の中で作り出すのはその場の空気感だけでなく、風景や人の顔など少しでも多くを想像できる方が楽しく感じる。
そして読むことと書くことを加えれば楽しさが倍増し、空想旅行が完成すると言ってもいい。

空想旅行ではまだ行ったことがないところを旅行先に選ぶことは言うまでもないが、いずれ機会があれば行って見たいと思っている場所を選ぶのがいいだろう。

空想旅行に出かけてみた(情報収集から)

旅先に選んだのはロシアのバイカル湖だ。
先ず空想旅行を始める前に、バイカル湖に関する知識を拾い出してみた。
中学生の頃に一番最初に買ったレコードがロシア民謡のLP版だったことを思い出したが、その中の一曲に「バイカル湖のほとり」というロシア民謡があった。
当時最初に買ったレコードがビートルズではなくロシア民謡だったことは、今考えると自分でも不思議としか言いようがないが、それでもそのレコードは擦り切れるほど何度も聴いた思い出がある。
ステレオとも言えないようなちゃちなレコードプレーヤーから流れて来るその曲は、寂しそうで美しいバイカル湖の畔の風景を想像するのに充分なものだった。

その後バイカル湖がロシアでも東寄りのモンゴルに近い立地にあって、世界一透明度が高く世界一深い湖だということを知った。

事前知識はその程度なので想像を膨らますためにグーグルマップとバイカル湖に関する情報サイトなどのタブを複数開いてみた。

グーグルマップで見ると最寄りの大きな都市はイルクーツクのようだが、この都市の名前は聞いたことがある。
イルクーツクの気候を調べ、もし実際に行くとしたならいつがいいか想像してみると、日本では梅雨に入り蒸し暑くなっているであろう6月後半がよさそうだ。

この時期のイルクーツクでは最低7°で最高23°となっているが、日本で言うと4月とほぼ同じ気温だ。
天気は晴れが40%で曇りが30%、雨が30%だ。

イルクーツク国際空港は町の東外れにあってさほど大きな空港でもなさそうだ。
町中のホテルまでは10Kmもなくタクシーでも1,000ルーブル(1,500円)程度までで行けるようだが空港に両替所はなく、レートが高くても日本の空港で前もってロシア通貨に交換しておくべきだろう。

ここからが空想旅行

長くなるので現地のホテルに着くまでの内容をここでは少し省略した。

イルクーツクに着いた次の朝、朝食をとるためホテル内にあるレストランで窓際の席に着くと、外は雨が降っていてレインコートを着たご婦人が歩いている。
道路の向かいに見える建物は少しレトロなレンガ色をした2階建てで、隣の駐車場に入るアーチ形の門はバラのツルをイメージした鉄製のトレリスになっているのがヨーロッパ的だ。

数組のカップルが同じように朝食をとっているが日本人は私だけのようだ。
隣のテーブルにはアジア系の若いカップルが座っているが、聞こえてくる言語からすると韓国人に間違いはないだろう。

予定ではイルクーツクにもう一泊してからバイカル湖の西の町スリュジャンカに向かい、一泊してからバイカル湖畔を走る盲腸線と言われる鉄道で列車観光しようと考えている。
イルクーツクからバイカル湖畔のスリュジャンカまでは130Km程度ありシベリア鉄道で2時間30分掛かる。

朝食を食べてから部屋へ戻り、カメラや財布をショルダーバックに入れ替えて市内観光に出た。
外に出て気付いたが、まだ10℃まで上がっていないと思われる気温は6月とは思えない程ひんやりとしている。

古めいたホテルとは言ってもスチーム暖房がこの地の寒さを忘れさせていたようだ。

イルクーツクが鹿児島市や川口市と同じ人口だと言うことを事前に調べていたが、そのイメージを覆すほどのどかな町だと感じるのは緑が多く交通量が少ないせいだろう。
そして目に入る建物の多くが2階建てだからだ。

ホテルを出て南に3Kmほど歩くとアンガラ川が見え、その前方にロックフィルダムも確認できる。
バイカル湖のことを調べて意外だったのは、このアンガラ川がバイカル湖唯一の水の出口だということに加え、この川が北に向かって流れているという事実だ。
世界地図を見ていると東方向のオホーツク海に流れ出ているだろうと勝手に想像していたからだ。

ダムも近くで見てみたい衝動に駆られるが、明日予定しているシベリア鉄道のチケットを買う方が優先だ。
イルクーツク駅はアンガラ川の対岸にあるのでタクシーを使いたいが、アンガラ川を目指して雨の中を歩いたので住宅街に迷い込んでいる。
ここではタクシーを見つけることも出来ないので商店がある所まで引き返すことにした。

少し歩くとマーケットらしき建物の前にタクシーが止まっていたので、イルクーツク駅までの料金を聞いてみた。
もちろんロシア語は喋ることが出来ないのでグーグル翻訳を使った。
日本を出る前にスマホのグーグル翻訳にロシア語をダウンロードしていたのでWi-Fiを気にせずオフラインで使うことができた。

空想旅行を記録する効果

このように頭の中で想像したことを記録すればリアリティーが増し、実際に行ったかのような記憶に深く刻まれる。
もちろんそれは現実ではないので間違った印象や認識を持ってしまったかも知れないが、他人と情報を共有することでもないので問題はないだろう。

空想旅行で出会う人や空間はフィクションでも、土地勘や距離感など事前に調べた内容はノンフィクションだ。

私はイルクーツクに行ったこともバイカル湖を見たこともないが、この空想旅行の記憶は当分忘れることはないだろう。
想像とはいえ自分の頭の中で作り出した非現実の記憶は、ややもすれば現実よりも素晴らしい世界を作り出しているからだ。
空想旅行の前に、出来る限り写真や動画を見ないようにルールを決めたのはこのためでもある。

空想旅行を文章にすれば、想像で描いた景色や空間のリアリティーを高め感覚を研ぎ澄ます効果が得られると感じる。
実際に行った旅行の思い出と比較しても記憶の輪郭に差がないとは言い過ぎかも知れないが、楽しい記憶がひとつ追加されたことには間違いない。

後日空想旅行の記録を読み返せば、再び記憶の中の景色や空間も蘇る。
私の場合はグーグルドライブのドキュメントを使って記録したが、字を書くことが好きな人はノートや手帳に手書きする方がいいだろう。

空想旅行が現実になれば

新型コロナウイルスを打倒し旅行にも行けない今の状況が解消されれば空想ではなく実際に行って見たくなるのは言うまでもないが、その時に空想旅行の記憶や記録が役に立つこともある。

ただ調べただけの内容であれば忘れるのも早いが、空想旅行の記憶はそう簡単には忘れないだろう。
例えばイルクーツクからシベリア鉄道でバイカル湖の西の町スルジャンカまで2時間半の時間を要するという内容も、ドラマ仕立てにして記憶に残すと忘れにくい。

シベリア鉄道には豪華な1等車両や2等寝台車両、寝台のないシート席の2等車両などがあるようだ。
シベリア鉄道に乗り込んで指定されたシート席を探し、荷物を棚に上げて座ると通路を挟んだ隣の席に見たことがあるカップルが座っていることに気が付いた。
昨日ホテルのレストランで隣のテーブルにいた韓国人の二人組だ。
思い切ってつたない韓国語で話しかけてみた。
「シルレジマン~ハングンサラミエヨ?」

といったようにシベリア鉄道に乗車してからのストーリーを想像して作り上げるのも悪くはないが、その中にもノンフィクションを盛り込んでおく。

シベリア鉄道に乗車してから1時間少し過ぎた辺りでボリショイ・ルク(Большой Луг)という駅に停車した。
ここから先はほとんど森の中を走るのでOP dark Pad駅(о.п. Тёмная Падь)を過ぎてバイカル湖に近付くまでは大きな駅はなく停車したとしてもキオスクすら期待できないだろう。

このようにマップで調べた内容をストーリーに加えておけば空想旅行とは言え記憶に残る。

実際に行った時には空想旅行で感じた時間感覚やシベリア鉄道車両の空気感、車窓からの景色などの違いを楽しむこともできる。
違いを楽しむためには空想旅行のストーリーを少しでも詳しく書き残すと面白くなる。

シベリア鉄道の車両の匂いや気温などの肌感覚、日本とは異なる気を使うことなどを詳しく想像しておくのがコツだろう。

空想旅行がもたらす効果

まるで日記を書くように空想旅行をするのなら10日間の個人旅行を1日ずつその日毎に記録してみるのもお勧めだ。
空想旅行も実際に旅行するときと同じように行程を組み、その行程通りに毎日1日分を空想してストーリーを記録する。

10日間の空想旅行が終わる頃には1冊の本にできるほどのストーリーが書けているやも知れない。

空想旅行をしている間は脳にもいい刺激を与え、心も幸福感で満たされるだろう。
空想旅行をすることで想像力も増し、書き残すことで表現力や文章力も上げる効果が期待できる。

テレビやYouTubeで世界中の動画を見ることが出来る時代ではあるが、自分の脳内で作り出される映像の記憶はそのどの動画よりも美しく心に残るだろう。
誰もが忘れかけた想像の力を取り戻す切っ掛けになるとも言えなくない。