60歳過ぎてから「もし若ければやってみたいことは?」「もし元気ならやってみたいことは?」と聞かれたら何と答えるでしょう。
私なら冒険心を揺さぶるような世界旅行とでも答えるのでしょうが、60歳過ぎていても元気ならまだ実行できないという訳でもありません。
しかし多くのシニアの方は私と同じように60歳過ぎてからの体調変化などで、リスクのある冒険旅への情熱や心の余裕は失くしているのではないでしょうか。
そこで提案したいのが半端ない幸せ感を得られる空想旅行です。
空想旅行の幸福感は半端ない!
フランスとスイスの国境をまたぐレマン湖の西岸には、フランスに食い込んだようにジュネーブという小さいが世界的にも有名な美しい街がある。そこから湖畔沿いに北東へ25Kmほど進むと人口2万人にも満たない小さな町ニヨンがある。
日本の40度近い蒸し暑い夏を逃れレマン湖畔の美しい町ニヨンで過ごしたが、フランスとイタリアの国境に近いモンブランから吹く南風がレマン湖を渡って優しく肌を撫でていく感覚を忘れることはない。
このように書くと、本当にスイスで夏を過ごしたようでもあるが実際は以前このブログで書いた空想だ。
この文章はグーグルマップでニヨンの場所や周囲の地理、人口なども調べた上で書いたものだ。
そしてストリートビューで景色や風景を見て空気感を頭の中で思い描き、そこで1ヶ月間暮らした想像をした。
もちろん朝起きて毎日のように通った湖畔のレストランの屋外テラス席で朝食を頼むシーンや、レンタカーでフランスまで観光に出かけた様子も事細かに書いたりした。
出来る限り詳細に書くことでリアルな旅行以上の幸福感を味わうことができると感じている。
空想するだけならここまでの情報もいらないが、書き残すならあらゆる情報を持っている方がリアリティーも増してくる。
おそらく実際にスイスに行ってレマン湖周辺を観光した人より、空想とは言え1ヶ月滞在した私の方がこの辺りには詳しくなっているはずなのだ。
リアル旅行でもアンコールワット遺跡がある街シェムリアップに行った時、土地勘が付くほど調べて行ったので同行した知人は私が初めてだとは信じなかったほどだ。
ホテルについてすぐ夕食のために行ったレストランも、まるで常連でもあるかのようにすんなりと案内できたのは事前調査のお蔭だ。
その事前調査と同じことを想像を膨らませながら小説のように文章化するのが空想旅行だ。
それは小説を読んで感じる幸福感にも似ているが、自分好みに書くのでそれ以上の幸福感を得られることは間違いないだろう。
旅行の楽しかった記憶は消えていく
先ずは人生で経験したこれまでの旅行をどれだけ記憶しているか思い出してみるといい。
その中でも最も楽しかった旅行のことを、どこまで詳細に思い出すことができるだろう。
私も含め大方の人は、殆ど記憶に残っている旅行などないはずだ。
記憶に残っているのはいつ頃どこへ行ったかという程度のことに過ぎない。
人の記憶というものはよほどインパクトの強い経験でない限りは記憶から消えていくというのが一般的なのだ。
例えばマレーシアに旅行の最終日にクアラルンプールのホテルで帰り支度をしていてパスポートがなくなっていることに気がついたという経験があれば、それは決して忘れることのない記憶として残っているのは間違いないだろう。
つまりとんでもないアクシデントでもない限り旅行の幸せ感などは消えていくということだ。
旅行で一番楽しい時間は旅行中ではない
旅行の時間を大きく三つに分けるなら旅行に行くまでの計画や準備段階と、実際の旅行に行っている時、そして家に帰ってからの思い出期間だ。
その中で最もウキウキわくわくして一番楽しい時間といえば最初の準備期間だということは旅行者のアンケート調査などでも明らかだ。
なぜ実際の旅行ではなく準備期間なのだろう。
それはおそらく頭の中で空想し、楽しい未来を想像するからだ。
実際に旅行に出発してからは想像ではなくリアルな経験なので、その間に起こり得ることは決して楽しいことばかりではない。
例えば旅行中に友だちと喧嘩をしてしまったとか、海外でお金を盗まれたなどは多くの人が経験していることだ。
そんな時は例え旅行中であっても楽しむどころか不安や苛立ちで、もう早く帰ってこの旅を終わらせたいと思うだろう。
旅行中のどんなトラブルやアクシデントも時が過ぎれば「あの時はいい経験になった」と思い出話として楽しむことができるようになるから旅行中よりも幸福感を得られることもある。
もちろん旅行中の出会いで意気投合したとか、ちょっとしたアクシデントを乗り越えた時の幸福感などは旅行に出かけないと味わえない。
ただそんな幸福度の高い旅行をするには勇気や冒険心などを持って望むくらいでないと叶わない。
リアル旅行以上に記憶に残る空想旅行
実際に空想旅行を楽しんで分かったことがいくつかある。
その一つが空想旅行もリアル旅行と同じ程度に記憶に残るということだ。
そして五感でしか得られない匂いや温度といった空気感も記憶に残すことができる。
いや敢えて記憶に残るような空想をしたと言う方が正しい。
それには誰でもできる一種の記憶術を使って空想旅行をするのが特徴だ。
聞いたことがない方のためにその記憶術を少し紹介しておく。
例えば75歳以上の高齢者が免許更新時に受ける認知機能検査で、イラストが描かれたボードを見せられ記憶するというものがある。
スイカ、ピアノ、物差し、チューリップ、テレビ、ヤカン、ネズミといったなんの変哲もないイラスト画を16枚記憶しなければならない。
これらはただ一度見るだけで記憶することは難しいが、その記憶術を使えば1ヶ月以上も忘れないほど記憶できるというものだ。
その方法とは例えば「帰宅途中で買ったスイカを自宅の玄関ドアに思いっきりぶつけてガラスを割り、玄関入って右の応接間に置いてあるピアノを混信の力で引きずって玄関へ移動させた後、仏間に入って竹製の長い物差しでその部屋の障子をブスブスと突き刺して破いていった。仏間の縁から庭に出てそこに咲いていたチューリップを引きちぎってリビングに置いてあるテレビの上に置いた。
このようなあり得ないストーリーを頭で作り出せばそのインパクトが強くて忘れることができないという術だ。
記憶に残る空想旅行をするためには、敢えてアクシデントを加えた旅のストーリーを考え小説風に書き残すのが効果的だ。
例えば「韓国の釜山駅でソウル行きのセマウル特急に乗ったが、途中下車の東大邱駅に到着する時間を廻ってきた車掌に聞いた。しかし言葉がまったく通じず困り果てていると..」と言った具合にアクシデント付きの空想を文章化していく。
このように空想するとその記憶はリアル旅行と同じように記憶として残るが、実際には行ってないので見ず知らずの国での不安感や緊張感といったネガティブ感情は一切伴わない。
これまで私が行った空想旅行でもロシアのイルクーツクの町並みやシベリア鉄道の車窓から見える景色、中央アジアにあるキルギスの美しいイシククル湖畔のチョルポンアタという小さな町の空気感などはリアル旅行並みの記憶が残っている。
誰でも幸せになれるのが空想旅行だ
スマホ、タブレット、パソコンとネット環境があれば誰でもできるのが空想旅行だ。
例えば長期で入院している方であっても、世界中どこへでも行くことができるのが想像のなせる業だ。
できれば関空で飛行機に乗るシーンも詳しく書くことで、リアリティが増し目的地へ到着した時の幸福度も増したりするものだ。
もちろんその時は何時発〇〇航空〇〇便といった情報も調べて書けばリアル旅行に近付けること請け合いだ。
仕事で忙しい人なら寝る前の30分を毎日空想旅行に充ててみるのはいかがだろう。
1日の終りに海外に飛んで毎晩幸せを感じながら寝ることも可能だ。
明日はどこに行って何をしようかと考えながら眠りに就けば、時には海外にいる夢を見てもおかしくないだろう。
私のように年齢的に海外に行く気力がなくなった人でも空想旅行なら問題はない。
普通の海外ツアーに飽きた人なら個人旅行でひとり旅の冒険をしても楽しいだろう。
旅慣れない人なら人様が書いた旅ブログを読み漁れば旅の要領を掴むこともできる。