一番の老後不安がお金だと勘違いする3つの理由

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老後不安の一位がお金だと煽られている?

「老後不安」というキーワードで検索すると、ほぼ全てと言っていいほどお金の不安をテーマにした記事が検索上位を占めている。
そのくらいお金不安に対する関心が高いということだが、それではお金さえあれば不安は解消されて安心して老後の人生が送れるのだろうか。

世の中の80%の人が老後不安を抱えているって本当?

当然だが老後不安の調査アンケートは老後に入っていない人が対象になっている。
総務省が公表している一世帯当たりの貯蓄現在高の平均が1,752万円あるにも関わらず、公的年金では不十分だという人が80%を越す高い数値になっている。

先ずはこのような調査は誰を対象になされた結果なのかを考えなければならない。
勿論老後不安が質問内容なので、まだ老後を迎えていない人で公的年金を受給していない年齢層だ。
しかもその年齢は60代を上限に50代、40代、若い人は10代以下に及んでいる。

実際20代や30代で老後不安に悩んでいる人がいるのかと疑いたくなるのは私だけだろうか。
私が20代や30代の頃は老後のことなどほんの少しも考えたことはないからだ。
老後が頭にちらつき出した年齢は50代後半になってからだ。

おそらく20代や30代で年金不安や老後に不安があると答えている人は「聞かれたから」「アンケートだから」「質問されたから」敢えて答えたのだろう。
もうすぐ老後と言われる年代に突入する私の周りでも、真剣に老後の金銭不安で悩んでいる人は見当たらない。
「悩んでもどうしようもないし、なるようになるだろう」と考えている人が大半だ。

次は調査をしたのは誰なのかということだ。
このような統計は内閣府や厚生労働省のような行政機関もデータを公表しているが、多くは生命保険に関係する団体などがアンケートに基づき公表している。

「二人にひとりがガンで死ぬ」と脅されているのと同じで悪い結果のデータを拾い集めて強調しているとしか思えない。
「最終的にガンが原因で亡くなった人が二人にひとり」なのであって、50代や60代までにガンで亡くなる人の確率ではないということだ。
これらの老後不安を強調したネット情報は、嘘ではないが本質は別にあると思わなければならないだろう。

一番の老後不安がお金だと勘違いする理由その1
「貯蓄は生活費に使えない」

現実を見ても老人の半数が破綻しているような状況は見当たらない。
「年金が少なければ少ないなりに」「貯蓄額が少なければ少ないなりに」生活しているのが現状だ。
今年は「老後資金2,000万円問題」が話題になったが、金融庁の金融審査会の報告書や総務省の調査に基づいて出した答えで、家計が毎月5万円の赤字になると言うので政府が老後不安を助長した結果になってしまった訳だ。
「何を今更」と思った人も多いだろうがマスコミも連日報道するものだから、実際は2,000万円以上貯蓄がある人までも不安にしてしまったのだ。

例えば60代で定年退職した人などは貯蓄額が平均以上の2,000万円あるのに老後の年金不安を抱えている人も多いが、その多くの人は貯蓄の2,000万円を除外して不安を募らせている。
どういうことかと言えば、貯蓄の2,000万円はあくまで予測外の出費のためのお金であって生活費などで使えるお金ではないと考えているからだ。

貯蓄の2,000万円は特別会計で生活費などで使えるのは一般会計と決めつけている人が少なくない。
勿論口座も分けているが一般会計に入ってくるのは年金とアルバイトなどの収入だけになる。

結局貯蓄の2,000万円は死ぬまで使えないとなってしまうのだ。

一番の老後不安がお金だと勘違いする理由その2
「生活レベルを落とせない」

サラリーマン現役時代は週一で飲みに行きゴルフは月に2回、家族の機嫌をとるために月に一回はそこそこのレストランで外食、マイカーは400万円以上する高級車など、そんな暮らしを定年退職後も保とうとするなら年金だけで賄えないのは言うまでもない。

しかし定年退職後に見栄も欲も捨てて現役時代の生活レベルを落とすことを想像できない人が多いことも老後不安に繋がっている。

実際には定年退職して老後人生に片足を踏み出してしまえば、現役当時の見栄も必要なく飲みに誘われる回数は激減したりするので当然出費も減るのだが、そんな人生を早くから受け入れることができないのだ。

そこまでではないにしても酒の好きな人は晩酌をやめて節約したり、好きなゴルフをやめることなど考えたくもない。
そして「人から落ちぶれたと思われたくない」と見栄を捨てきれない人も少なくない。

元々人目を気にする人は先入観や思い込みが強く、自ら老後不安要素を増やしていると言ってもいいだろう。
「お金がないと贅沢はできない」「心豊かな暮らしにはお金が必要」などと若い頃からの価値観を老後になって変えようとはしないのが不安の原因になっている。

このように贅沢に慣れてしまっている人は生活レベルを落とすどころか、お金がいくらあろうがそれ以上の贅沢を望むので、どれだけお金を持っていようとまだ足りないと感じてしまうのだ。

一番の老後不安がお金だと勘違いする理由その3
「お金の掛かる不安材料は挙げれば切りがない」

貯蓄しているお金が使えないのと同じで、老後にお金が必要になるかもしれない出来事を想像すれば切りがない。
7人にひとりが認知症なると言われているので、介護施設への入居費用が必要になるかも知れない。
もしそうなれば月々最低でも15万円程度は入居費用が掛かると聞くので年間約200万円程度になり、入居から10年生きると2,000万円は必要になる。
そうなっても配偶者の生活費用も掛かるので年金を充てる訳にもいかない。
更に自分が死ねば葬儀費用に墓地の費用が必要になるが子どもたちに負担を掛けたくないなど不安材料には事欠かない。

子どもが結婚する時にはまとまったお金が必要だろうし、孫に気に入られようと思うならお金がいるなど挙げればきりがない。
そのような「もしこうなれば・・」といったネガティブ発想は尽きることがなく、どれだけ多くのお金を持っていようが不安を払拭できるものではない。

老後不安をお金で解決しなくてもいい現実

どうじたばたしても一般的なサラリーマンに、老後のお金を心配しなければならない不安から抜け出すことはできないと言うことだろう。
しかしそのようなお金を伴う価値観を変えてしまえばさほど大きな不安にはならないはずだ。

現に老後生活をしている大半の人が公的年金と貯蓄で何とか遣り繰りして生きている事実だ。
マスコミなどで報道されている老後破綻など老後の不安を煽る情報を鵜呑みにすると、老後に希望を抱くこともできず心豊かな人生から遠ざかることになりかねない。

確かに現在社会では生活にお金が伴うのは免れない事実だが、過剰にお金にとらわれないことこそが老後不安から免れる唯一の手段と思えてならない。
どうせいつかはどんな人でも老後を迎えるが、老後と言われる年齢になってしまえば老後不安とは言わない。

今老後生活をしている人が現実に抱えている不安こそが、まだ老後を迎えていない人の不安でなければならないはずだが、高齢者に対する調査では健康や災害不安が収入不安を大きく上回っている。
この結果を見ても老後不安に年金や収入などのお金に関係する不安が一番なのは腑に落ちないところだ。

一度も病気をしたことがない若い人に将来の不安を聞いて健康という答えが返ってくるはずもなく、そのようなアンケートを大きく問題にして不安を煽るのはナンセンスとしか思えない。
老後不安とは老後になるまでの不安なのだから。