60歳過ぎて住まいを改修するとき知っておきたいこと!

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老後を見越した最後のリフォームをするときの注意!

退職金などで60歳過ぎてからの住まい改修は人生最後の家づくりと言える。
老後を見越したリフォームには若い時とは目線を変える必要もあるだろう。

1. 老後のための自宅バリアフリー改修
2. 手すりの取り付けは介護保険が基本だが階段は早めに!
3. 老後に向けてのキッチン改修は「楽しめるキッチン」にすること
4. 寝室リフォームは注意点満載
5. 高齢者に優しい浴室リフォーム
6. 60歳過ぎて老後を見越したリフォームまとめ

1. 老後のための自宅バリアフリー改修

歳をとってもできる限り慣れ親しんだ自宅で生活したいと誰もが思っていることだろう。
年齢が高くなると畳のヘリでも蹴躓く(けつまずく)と言われているが、足が弱ってくると実感するようになる。

今は家を建てたりリフォームをする場合、バリアフリーは常識となっているが、昭和時代に建てられた家で廊下から部屋へ入る入口を境に畳の厚さ分(約4センチ程度)の段差のある家は今でも多く残っている。
これがちょうど躓きやすい段差で何とか解消できないかと考えている人も多いだろう。

ホームセンターへ行けば段差解消スロープという三角に加工された商品が安価で売られているが、これを設置しても足が上がらなければ躓き足の指を強く打たないというだけのものだ。

段差解消リフォームではどこを基準にするのかが問題になる。
通常は廊下を基準にして畳敷きの和室を下げる方が工事費も安くなる。
ほとんどの場合、廊下とトイレや脱衣室などの床高が同じで玄関框も関係してくるからだ。
どうしても水回りの床を改修すると予算が掛かる。

和室の床高に合わせて4センチ程度廊下を上げようとするなら、トイレや洗面器具を一度取り外して配管工事をし再設置しなければらず、玄関框も4センチ程度上げなければならなくなるからだ。

廊下も昔の工法で捨て貼りをせずに根太の上に直接フロアが貼られている家では、20年も経過すれば多く歩くところがブカブカして修繕しなければならなくなっていることも多い。

その場合はこの際、玄関も含め改修するのが理想だ。
昭和に建てられた家のほとんどは玄関土間と玄関フロアに40センチ以上の段差があり、式台と言われる踏み板が設置されている。
玄関を改修する場合は玄関土間を上げ、フロアとの段差を20センチ以下にすると車椅子の移動も楽になる。

だが玄関土間を20センチ以上上げようと思うと玄関の外に階段かスロープを設置することになり、そのスペースがあることが条件になる。
スロープの場合は、車椅子を使う条件にしようと思うと傾斜角度が緩くなり必要スペースも多くなる。
階段にする場合も2段は必要で、車椅子対応にするなら蹴上げを低くして踏み面を車椅子が置けるくらい広くしなければならない。

勿論玄関サッシの改修も必要になるため予算は多く必要だ。

2. 手すりの取り付けは介護保険が基本だが階段は早めに!

60歳過ぎて退職金などでリフォームを考えている場合、せっかくなので将来を見越して手すりも設置しようと考えるのは当然だろう。

だが今が元気で手すりを必要としていないなら慌てて取り付けない方がいいだろう。
要支援か介護認定を受けていれば1割負担で9割は介護保険が使えるからだ。
特に廊下やトイレなどは身体能力の状態によって付ける位置や高さも変わってくる。

もし将来を見込んでリフォームするなら、手すりが簡単に設置できるように下地だけを広めに仕込んでおくべきだろう。
必要ないのに廊下などに手すりを設置すると、片側で7センチ程度は狭くなることも理解しておくといい。

もし手すりを設置するなら階段は早い方がいい。
要支援の認定を受ける状態になるまでに起きる、階段から転落して骨折するなどの家庭内事故は意外に多いからだ。
階段から転落して死亡する事故も高齢者には少なくない。

交通事故より多い家庭内の死亡事故を防ぐには先ずは階段の手すりからと言ってもいいくらいだ。

特に寝室が二階でトイレが一階にしかない場合は、どうしても夜中に階段を使うことになる。
寝起きすぐの体の動きに違和感を感じることが多くなるのも60歳過ぎるころだ。
50代の頃はトントントンと軽快に降りていた階段も、60歳過ぎるとそうはいかなくなるのだ。

介護保険を待ってはいられない理由は事故が起きてからでは遅いからだが、要支援認定を受けてない人の階段転落事故も多いのが事実なら介護保険制度自体の見直しをして頂きたいところだ。

3. 老後に向けてのキッチン改修は「楽しめるキッチン」にすること

一般的にキッチンを改修する時は使い勝手を第一条件にするだろうが、60歳過ぎてからのキッチンリフォームは「楽しめるキッチン」にすることを考えてほしいところだ。

共働きで仕事をしている間は朝食の片付けもままならないのでカウンター付きの対面キッチンが好ましいのは、シンクに洗い物を溜めていてもリビングから見えないためだ。
そして子育て中なら子どもの顔を見ながら料理できたり、壁付けキッチンのように孤独感を感じないことも対面キッチンの良さだ。

壁付けキッチンの一番のメリットは部屋の面積を有効に使えることだが、カップボードと家電収納の納まりや動線は対面キッチンに比べ悪くなることが多い。

しかし子どもが独立してひとりでキッチンに立つことが多いなら壁付けキッチンも悪くない。
できれば南か東の壁にキッチンを設置し、正面に窓を設けて外の景色を見ながら料理するのも悪くはないだろう。

夫婦で料理を楽しんだり孫と一緒にお菓子を作るような楽しみ方を考えるなら、スペースは必要だがフラットトップ天板のアイランド型が好ましい。
フラットトップ天板キッチンのデメリットは、いつも綺麗に片付けておかなければリビングやダイニングからシンクが丸見えになることだ。

だがそれも退職して家にいる時間が多いのであれば問題ないだろう。
在職中は主婦として弁当を作ったり仕事から帰って疲れた中での料理も、退職すれば家事という感覚ではなく料理を楽しんでほしいのだ。

男性も定年退職したなら奥様と二人で料理を楽しむことで円満な老後に繋がるだろう。

キッチンが同じ水回りリフォームでも浴室洗面やトイレと違うのは、楽しむことができる場所になることだ。
それはキッチンという場所が第二の人生に、心の豊かさや充実感を与えてくれる可能性のある場所に成りうるということでもある。

その意味からもキッチンをリフォームする場合は夫婦で相談し、どうしたら楽しめる場所になるのかを優先して考えてほしいところだ。

4. 寝室リフォームは注意点満載

老後を見越したリフォームをするなら、寝室は階段を使わなくて済む一階がベストだろう。
そしてトイレだけは近いに越したことはない。

最近は寝室を別々の部屋にしている夫婦が増えているが、そのこと自体は悪いことではない。
その理由は「夫のいびきで眠れない」「妻が遅くまで電気を付けて本を読む」「起きる時間がまちまちなのでゆっくり眠れない」など様々だが、やはり夜は熟睡できる環境が求められるからだ。

夫婦で寝室を分けるなら寝室兼マイルームにするのがお勧めだ。
例えば「寝室兼自分用の書斎」「寝室兼趣味部屋」などで、忘れてはならないのが緊急用ブザーなどの設備を設置しておくことだ。

お互い歳をとれば何があるか分からないので「もしものための装置」ということになるが、朝起きてくるのが遅かったり風呂の時間が長いと感じた時は生存確認も必要になってくるからだ。

寝室の壁に白いクロスは避けた方がいいのは、白は緊張色で認知症を誘発するからだ。
一般的には寝室の天井に白いクロスを貼ることは多いが、濃い色で仕上げる方が落ち着いて眠ることができる。
閉所恐怖症の人に濃い色はお勧めできないが、生活していて寝室ほど天井を見る部屋は他にないことから天井の色にもこだわってほしい。

照明も白い昼白色は避け、間接照明か調光できるLEDの電球色がお勧めだ。
勿論カーテンは遮光性能1級A以上で、東に窓がある場合は朝日を遮る物がいいだろう。
カーテンの大きさも窓寸法ギリギリより、ひと回り広く窓を隠してしまうくらいがちょうどいい。

車道や鉄道に近いところや繁華街など、夜も外部の音が気になるなら遮音も考慮した寝室リフォームをするべきだ。
予算を抑えたいなら完全とは言えないが、12.5㎜のプラスターボードを外壁に面する壁に二重張りするだけで遮音効果は上がるだろう。
窓もペアガラスに加えペアガラスの内窓を設置すれば効果も高い。

寝室の床は介護や掃除を考えると木質フロアになるが、ベッドの場合にもしもの転落を考慮するなら厚手のクッションフロアかコルク素材のように弾力性のある建材がいいだろう。

※参考にお読みください

近年特に若い世代に好まれているホワイトインテリアのお洒落な部屋に人気が高まっています。 しかしその白基調インテリアにデメリットが隠れていることを疑う人は少なく、住宅メーカーでも好んで特集が組まれていたりします。

5. 高齢者に優しい浴室リフォーム

60歳過ぎてから浴室をリフォームするなら、老後の生活を見越して考えるのは当然だ。
浴室改修の方法は大きく分ければユニットバスか在来工法かを選択することになる。
一般的にはユニットバスで改修する人がほとんどだが、この場合でも老後を見越して注意しておきたいことは多くある。

ユニットバスのメーカーも最近は掃除が簡単にできるような工夫をしているが、特に排水溝のヘアーキャッチやカビ対策には商品によって違いがある。
ユニットバスのメーカーを選ぶ時は先ず汚れやカビ対策の工夫を見極めることが必要だ。

ユニットバスで浴室改修するなら手すりも最初から取り付けておく方が無難だ。
手すりを後付けできるメーカーがほとんどだとは思うが、購入後年数が経てば仕様が変わるなどの理由で施工が困難になることも考えられるからだ。

入口の扉も折り戸が基本仕様で開き戸(ドア)や片引き戸などはオプションになっていることが多い。
老後のことを考えればお勧めは片引き戸だが、介護のために入口開口を大きくできる3枚引き戸も1616タイプ以上にオプションで用意されている。
しかし3枚引き戸は構造的にも複雑になるため、故障率も高いと言わざるを得ない。

因みに1616タイプとは、面積が1.6m×1.6mのユニットバスで一般家庭に最も多く売れている標準タイプの大きさと言える。
これが1620になると1.6m×2.0mで1624になると1.6m×2.4mになり、概ね浴槽より洗い場が広くなる。

浴室の広さも小さな子どもを連れて入浴するなどの理由があれば広い方がいいだろうが、ひとりで入るなら一般的な1616サイズで充分だ。
浴室暖房も広すぎると効きが悪くなるのは言うまでもない。

老後を見越して浴室暖房が必須といってもいいのは、家庭内事故の最も多いのが浴室内での急激な温度低下による脳卒中だからだ。
最近のユニットバスは断熱技術も上がって暖かくなっているが、窓を大きくすると例えペアガラスにしても断熱効果は下がってくる。
暖かい風呂を望むなら、窓は小さめにして構造が複雑なジャロジー窓は止めるべきだ。

高齢者になれば風呂はリラックスして癒される部屋にしたいので、壁の色を選ぶ時も暖色系がお勧めだ。

6. 60歳過ぎて老後を見越したリフォームまとめ

60歳過ぎてからのリフォームは人生最後の住まいの見直しとなるだろう。
特に60歳からは体の変化も著しいと考えなければならない。
だが要介護状態になったとしても、デイサービスなどの利用も考慮して考える方が現実的だ。

今は元気でも70歳、80歳になった時のことを想像し、安全で健康を意識したリフォームプランが好ましい。
認知症や脳卒中に留意するなら壁の色や部屋の温度に意識を向けることを忘れないことだ。

60歳過ぎてリフォームを計画しても継続雇用で仕事をしているなら、定年退職後は想像もできないほど家で過ごす時間も多くなるので居場所確保も忘れてはならない。
人生最後のリフォームは、最後の人生を楽しく健康で過ごすための住まいづくりと言えるだろう。

老後を見越したリフォームの注意点
・玄関や廊下の段差解消
・段差解消の基準点
・介護保険と手すり工事
・楽しむためのキッチンリフォーム
・寝室の壁や天井の色
・寝室照明の色
・寝室に緊急ブザー
・寝室の遮光と遮音
・浴室の窓の大きさ
・浴室入り口
・浴室暖房