私は納屋で暮らしている

リフォーム後の古い納屋

古い納屋をリフォームして退職後の居場所に!

何とかあと20年持ってくれればいいと思いリフォームした古い納屋。
これほど居心地がいいとは予想外だった。

我が家の納屋とは

おそらく築70年以上は経っているいるだろうと思われる納屋は、私が生まれた時には既に建っていた。
田舎ならどこにでもあるような納屋は母屋と同じ敷地内に建っているが、昔は米の乾燥機やトラクターなどの農機具が入っていたこともある。
木造二階建て納屋の二階には天井の低い4畳半の和室が二部屋作られているが、ここも物置状態になっていた。

勿論基礎などあるはずもない。
母が亡くなり農業をしなくなってからは使わない農機具倉庫になっていた納屋だ。
屋根は建てられた時からのセメント瓦で、近年強まった酸性雨によって著しく劣化進み所々で雨漏りも見られた。

雨の漏っている個所は垂木が腐食し内部も壁土が落ちるなどして、あと数年もこのまま放置しておけば解体しなければならないほど傷んでいる。
しかし解体するとなれば100万円近い費用は覚悟しなければならないので、どうしたらいいものか悩んでいたのだ。

納屋のリフォーム

そこでこの古い納屋をリフォームして、定年退職後の居場所にしようと考えたのが60歳になってからだ。
それは総合建設業の会社でリフォームの仕事をしていたこともあり判断できたことだ。

おそらくリフォームの知識がなければこんな決断はしていないだろう。
築70年以上で基礎もなく雨漏りしていて垂木が腐食し、梁は低く丸太の小屋張りも虫食いがひどい状態だったからだ。

もしお客様からこのような相談を受けたとしても、予算価値を考えればお勧めしていないかもしれない。

先ず屋根のセメント瓦を降ろした後、雨漏りで腐食した垂木を修繕し野地板の上から構造用合板で補強してガルバリウム鋼板の屋根材を葺いた。
納屋の中にあった古い農機具や昔のタンスなどを全て処分し、給排水設備の仕込み工事も全て自分で行った。
できる限り自分で行わないとリフォームに必要な予算と完成した建物の価値が同等にならないからだ。

サッシは業者にお願いして発注ミスなどで在庫になっている商品を割安で譲って頂き、そのサッシに合わせて窓を作った。
そのせいで窓にはめ込まれたサッシは色とりどりになったが、さほど違和感はない。
今度はその窓に合わせて外壁を張ったが、やはり予算面を考えよく倉庫などの外壁に使うガルバリウムの角波鉄板を使用した。

一般家屋で使われるガルバリウムの外壁材との違いは、残熱や結露対策にもあるが化粧的にはビスが見えるか見えないかの差だ。

内部は床を張ったので更に低くなった梁を30センチ程度上げ、下地をして木目のクロスを貼ることにした。
それでも基礎のない木造躯体は耐震性に不安が多いので、気休め程度に筋交い補強を施し地震に備えている。
二階の4畳半の和室の一部屋を吹き抜けにし、もう一部屋を物置用のロフトにした。
頻繁には上がり降りをしないと考えスペースを取らないようにと設置した梯子階段が、今となってはもう少し蹴込の広い階段にしておけばよかったと後悔をしている。

お願いした職人は大工と電気屋、内装屋と板金屋くらいだ。
たまに知人が寄ってくれるが、初めて来た人は外見が納屋なので内部の完成度の高さに驚かれる。

    

納屋での暮らし

リフォームをしたお蔭で内部だけ見れば新築同然だ。
1階フロアはホームスタジオ兼ワークルームと言ったところで、録音機材やパソコン、楽器などを置いている。
1階フロア奥に洗面室とトイレを設置したのは正解だった。

当初はこの納屋で寝ることは考えていなかったが、今では4畳半のロフトにベッドを置き寝起きしている。
母屋に帰るのは食事と風呂くらいだ。

何もこんなボロ納屋をリフォームしてまで退職後の居場所にしなくても、母屋には独立した子ども部屋や空いた部屋が複数あるのだが、母屋から一度外へ出るというところに意味があるのだ。

正にこの納屋は私の城となり、毎日この部屋で遣りたい放題の生活をしている。
誰にも干渉されることもなく一人でいても暇を持て余すことはない。

と言ってもこの納屋で朝から晩まで引きこもっている訳ではない。
日課にしている1日2回のウォーキングや、倉庫の中にネットを張った自前のゴルフ練習場で汗も流している。

今の悩みを言えば相変わらず時間をうまく使えていないことぐらいだ。
勿論お金に余裕がある訳でもないが、今はこの暮らしに満足している。
この暮らしを一言で表現するなら「Let it be.」(なすがままに)といったところだろう。
自然の流れに身を任せ思ったことや遣りたいことを続けているだけだ。
人の目を気にせずありのままであることを心がているだけだ。