渋野日向子選手に学ぶメンタルパフォーマンス

Angus FraserによるPixabayからの画像

二十歳の渋野選手から学ぶメンタルパフォーマンス

全英女子オープンで優勝した渋野日向子選手を見ていると、新しい時代のヒーローに相応しい学ぶべき新感覚を発見できる。
昔では想像すらできなかったその新感覚は驚異的とも言えるほどのメンタルパフォーマンスだ。

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笑顔の裏に見える新人類のメンタルパフォーマンス

テニスの大坂なおみ選手がグランドスラムで優勝したときも同じようなことを書いたが、渋野日向子選手の笑顔力はそれを上回っている。
この渋野日向子選手のメンタルパフォーマンスは今までに見たこともなく常識を覆すものだ。

呆気なく優勝してしまった今回の全英女子オープンゴルフがそのメンタルパフォーマンスの正当性を証明したと言っていい。
当然訓練の努力や筋力、柔軟性などの素質は備わっていたにせよ、笑顔だけで優勝できるならそんな簡単なことはない。
しかしその笑顔の裏に隠された何かは、私たち昭和人では理解することも出来ない感性に違いない。

昔と今のメンタルパフォーマンスの比較

テレビで渋野日向子選手を見ていて感じたことは、私のような昭和育ちの人間には到底理解できるものではなかった。
樋口久子選手や岡本綾子選手が活躍した時代にはあり得ない映像を目にしていた。
当時この樋口選手、岡本選手の根性は顔ににじみ出ていたものだ。

もし私たちが会社の研修であの笑顔を振りまいていたら何を言われたか簡単に想像することができる。
「こら!何をへらへらしてる!」と一喝され、「この会場から出ていけ!」と感染するウイルスのように扱われたであろう。
更に契約を勝ち取り会社で拍手を受けるような場面で同僚にハイタッチでもしようものなら、次の日から軽い人間のレッテルを貼られるのは間違いなく、敢えて平然を装わなくてはならなかった。

私たちはいくら嬉しくても笑えない時代に人生の大半を過ごしてきたが、渋野日向子選手はありのままの笑顔をばらまきながら人生を送っている。
決して批判ではなくそんな渋野選手が羨ましい。

笑顔の裏に見え隠れする対照的な素顔

世界のメジャータイトルを簡単に勝ち取る最近の日本の女子選手には共通する性分が見え隠れしている。
テニスの大坂なおみ選手のあの謙虚で平静を装う裏には、一般人の何倍も激しそうな喜怒哀楽を持っていそうだ。
そして渋野日向子選手も同じように負けん気は他のどの選手より強く、その分喜怒哀楽も激しいに違いない。

過去にはテニスのジョンマッケンローがラケットやその辺の物へ八つ当たりする光景や、ゴルフの有名男子プロがクラブをへし折る姿を何度となく見てきた。
それが我々一般人にはない勝負の世界を制する気迫であり根性だと感じていたのだ。

おそらく渋野選手も誰にも負けないほどの根性の持ち主なのだろうが、あの全英オープンというゴルフでは最も権威のある大会で緊張を笑顔で吹き飛ばしたメンタルコントロールは素晴らしい。
全英女子オープンの最終日は特に笑顔が多かったが、優勝を争ったリゼット・サラス選手(米国)とは対照的な表情に見えた。
その差が優勝を導いたとしたらどうだろう。
あの最終日18番のバーディーパットが全てを物語っていると言っていいだろう。

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笑顔がもたらす効果が急浮上

「笑顔でガンの進行が止まった」とか、「笑顔が健康にもたらす効果は絶大」など今に始まった笑顔の効能ではないが、テレビで渋野日向子選手の優勝後笑顔の話題が急浮上している。

しかし渋野選手の笑顔から学ぶのは、あの世界中が注目している緊張感の中での笑顔はどうしたら作れるのかというところだろう。
普通の人ならあの緊張感の中で笑顔と言われてそう簡単に作れるものではない。
そしてあの「もぐもぐタイム」と言われるお菓子を食べる仕草は何を物語っているのだろう。

今は誰も笑顔が健康にもたらす効果は知っているが、一番知りたいのはどうしたら心底笑顔になれるのかということだ。
渋野選手がどうしてあの世界の大舞台の緊張感漂う状況で笑顔を作れたのかという事実だ。
田舎育ちの二十歳の女の子が、いきなり世界で最も高い緊張感を笑顔で相殺する技術を見せつけたのだ。

渋野日向子選手のバウンスバック率

渋野日向子選手のデータで唯一日本ランク1位なのがバウンスバック率だ。
バウンスバック率とはボギーかそれより悪いスコアで上がった直後のホールでバーディー以上のスコアをマークする確率のことだ。

人は誰でも失敗すれば落ち込み、それを引きずりまた失敗を繰り返す傾向にある。
渋野日向子選手は失敗からの立ち直りが日本一早い女子ゴルフプレーヤーなのだ。
ゴルフプレーヤーが優勝する一番の要因と思われるパーブレーク率は日本ランク2位だ。

多くのデータが存在する中で世界メジャー優勝を日本勢42年ぶりの快挙に導いたのがこの日本ランク1位のバウンスバック率の実力だったに違いない。
全英女子オープン最終日の後半9ホールを、まるで友達とプライベートでまわっているようにすら見える緊張感の無さがバウンスバック率日本1位の実力だ。

因みに渋野日向子のバウンスバック率は26%でパーブレーク率は20.5%だ。

※参考:日本女子ゴルフ協会の渋野日向子プロフィール詳細から
https://www.lpga.or.jp/members/info/1002952

失敗を恐れない思い切りの良さを見習いたい

渋野日向子選手が最終日に思い切りの良さを見せたのがIN12番ホール、ピンまで262ヤードパー4のミドルコースだ。
最終日ラストの追い込みで勝負を左右するここぞという場面で躊躇なくドライバーでワンオンを狙った潔さが光る。
グリーン右が池で左はバンカーというレイアウトの中、ほんの少しのミスで優勝から遠ざかるリスクがあるにも関わらず敢えて挑戦した勇気を称えたい。

もう一つの思い切りの良さが際立ったプレーが最後18番ホールのバーディーパットだ。
入ったから優勝できたが、もし外していれば3パットもありえるほど強いパットに見えた。
その思い切りの良さが渋野選手の勝負強さそのものだ。

特にこの思い切りの良さを参考にしたいのは、大事な決断をしなければならない時だ。
潔いほど短時間に自分の実力を100%出せると信じる能力は誰にでも真似の出来ることではないだろう。

これからの新時代に相応しい新人類

渋野日向子選手が成し遂げた全英女子オープンのメジャータイトル獲得は、日本選手では42年ぶりでしかも二十歳のまだプロ二年目の選手だったこともあり奇跡を起こしたような興奮に沸いている。
それもそのはずで42年前樋口久子選手依頼多くの名だたる選手が挑戦してきたが叶えられなかった夢のようなタイトルだからだ。

それをたったプロ二年目の二十歳の女の子が「もぐもぐタイム」だとか緊張感もまるでなく笑顔でハイタッチしながら獲得してしまったのだ。
見ていても呆気にとられるほど訳もなく簡単に取ってしまったといった感じがする。

これこそが新時代に相応しい成功を遂げる新人類なのだろう。
昭和人なら血のにじむ努力といった言葉が隠れているが、新人類の渋野日向子選手にそのネガティブな言葉は似合わない。
「毎日楽しんでゴルフをしているだけ」と聞こえてきそうな雰囲気は今までの日本のアスリートにはない新感覚だ。

おそらくゴルフに限らずどのジャンルにも於いても、共通して新人類の成功者が生まれてくるのは間違いなさそうだ。
私たちシニアも少しばかりその新人類の仲間に入れてくれないだろうか。
まさか渋野日向子選手のような成功まで望むものではないが、せめて楽しみながら生き抜くコツだけでも学びたいところだ。

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