琵琶湖一周 車中泊の旅

白鬚神社

満タンノートで一泊二日車中泊ひとり旅

久しぶりに遠出した。
いくら人との接触を最低限に抑えた車中泊旅とはいえ温泉や観光地にも行ってみたいが、緊急事態宣言下ではやはり気が引けるので解除を待っていたのだ。
それでも勿論細心の注意を払いながらの移動を心掛けた。
除菌アルコールやアルコールウェットティッシュなどの準備も怠ることはない。
私の住む兵庫県からそう遠くない琵琶湖だが、大津近辺に行った記憶がある程度でその他はまったく行ったことがない知らない地域だ。

ひとり旅に欠かせないリフレッシュ休憩

いつものように有料道路は通らず下道ルートで琵琶湖へ向かった。
私の家からだと京都北部の舞鶴を経由して福井県小浜市から琵琶湖へ向かうのが最も近いルートのようだ。

小浜市までのルートはこれまでに何度も通ったことがあるので初めて見る光景ではない。
その小浜市までにおおい町という町があるが、先ずはそこの「あみーシャン大飯」という複合施設によって休憩を取ることにしている。

休憩と言っても目的は昼温泉に浸かることだ。

そのあみーシャン大飯に着いたのは12時20分前だ。
玄関を入ってアルコール除菌と機械検温を済ませ受付表に住所氏名電話番号などを記入した。

これはどこの温泉施設でも共通した受付対応だ。

勿論マスクをせずには入ることが出来ないのも同じだ。

これまでに行った中で一番徹底していた温泉は道後温泉本館神の湯だった。
ここでは人数制限されロッカーの鍵も使うたびに消毒されていた。

ひとり旅で最もリフレッシュできるのがこの昼温泉だが、注意しなくてはならないことも多い。
その最も重要な注意点が浸かり過ぎないことだ。

のぼせや湯あたり、湯疲れなどの予防はちょっと物足らない程度で湯から上がることだ。
私の場合は7~8分(最高でも10分)を2度浸かるようにしている。
家の風呂とは違いどこの温泉でもそれだけで汗が噴き出すほどだ。

温泉施設によってはサウナも常設されている所もあるが入ることはしない。
温泉だけでも結構体力を消耗するからだ。

これからまだ何時間も運転しなければならないとなれば尚更だ。
温泉から上がって水分補給をするのも忘れてはならないが、できればビタミンC飲料が好ましいようだ。
温泉で疲れて居眠り運転をしたとあってはリフレッシュの意味もない。

絶対見たかったメタセコイア並木

温泉でリフレッシュした後、国道303号線で琵琶湖へ向かった。
岐阜県まで続く国道303号線を通るのは初めてだ。
滋賀県高島市へ入ると琵琶湖が見えてきた。

琵琶湖での最初の目的地はマキノ高原のメタセコイア並木だ。

メタセコイアという樹木を初めて知ったのは冬ソナだった。
男が冬ソナなどという恋愛ドラマをと敬遠される方もあるだろうが、私はそれよりもっと前から韓国映画の映像の美しさに興味を持っていた。
その当時、ピョンジ(手紙)、チョプソク(接続)、シュリなど何度も繰り返し見た記憶がある。

冬ソナ主人公の二人が雪だるまを作ってデートした場所が南怡島(ナミソム)のメタセコイア並木道だ。
美しく描かれたその映像が頭に残り、一度行ってみたいと思うようになった。

韓国春川市(チュンチョンシ)に行く途中にあるが、ソウルからでも特急で行けばそんなに時間は掛からない。
冬ソナが流行ったのは随分前だが、定年退職してやっと行けるようになったと思っていたらこのコロナ騒ぎで行けなくなったのだ。

それなら日本にはないかと探してみると滋賀県にあることが分かった。
メタセコイアはあまり聞き慣れない針葉落葉樹で紅葉もすれば新緑もある四季によって大きく風景を変える樹木だ。

この旅で行った3月半ばはほとんどの葉を落とし枝だけになっていたがそれでも一見の価値はあった。
想像していた南怡島(ナミソム)の風景とも重なりそれなりに感慨深いものがあった。

マキノ高原メタセコイア並木

認識不足でナビが拒否

メタセコイアを後にして彦根城へと向かった。
予定ではその途中の長浜市豊公園で弁当でも食べようと考えていたが、1時間程度予定していた時間を過ぎていたので彦根城へ直行したのだ。

実は豊公園に行こうとナビをセットしかけたが目的地入力を何度繰り返しても豊公園が出てこなかったこともここを飛ばした理由のひとつだ。
帰ってから入力できなかった理由を探してみるとただ単に私の認識不足だということが分かった。

カタカナ入力しかできないナビに間違った名前を入力していたのだ。
ナガハマシユタカコウエンと何度か打ったが出てこないので、ユタカコウエンと入力すれば北海道のゆたか公園がヒットした。
トヨコウエンと打ってもみたがこれも駄目だった。
ホウコウエンが正解だと知ったのは帰ってからだ。豊太閤のホウだったとは迂闊だった。
ここが桜の名所だという知識はあったのでシーズンには少し早いのを理由にして自分を納得させていた。

初めての彦根城

彦根城へ着いたのは午後4時頃だった。
驚いたのは堀より中の城内を車で走行できることだ。

兵庫県に住んでいるせいで姫路城を日本の城の基準に考えているからなのか、しっかり積まれた城壁の石垣の中に車で入って行くことに躊躇すら覚えた。

本来なら入城券を払い天守まで行きたいところではあったが時間と体力を考え残念した。
事前調査で敢えて不規則に作られた石段は高低差50mで140段に及ぶことを知っていたからだ。

城内を少し歩いた後、彦根城南西にある夢京橋キャッスルロードを歩いてみた。
城下町として調和のとれた日本的な美しい街並みだ。
どの店も洗練された和のデザインで統一されている。

おそらく彦根市が余程力を入れこの街を作っているのだろうことが伺える。

午後5時を廻ったので彦根を後にした。

彦根夢京橋キャッスルロード

琵琶湖のサンセットポイント

琵琶湖を一周するにあたりサンセットサンライズを考慮したから東沿岸から時計回りに周回することにしたのだ。
この辺りの日没は午後6時だというのも事前に調べている。

彦根から南下し近江八幡市までに選んだサンセットスポットが「あのベンチ」だ。
「あのベンチ」が正式名称ではないがいつ誰がそう呼んだか知らないが、いつの間にか「あのベンチ」で通るようになっているようだ。
その証拠にgoogleマップにも「あのベンチ」と書かれていて「あのベンチ」で検索も出来てしまった。

近隣の方が旅人のために置かれたと聞いたことがあるがテレビなどで放映されて有名になったのは随分と前のことだ。
その人気が今も続いているのか気になっていた。

私があのベンチに着いた時には数名のライダーやカップルがベンチが置いてある木の周りに集まっておられたので敢えて遠くから夕日を撮影することにした。
返ってその方たちのシルエットがあのベンチのある木の周りに夕日に映えるドラマを作ってくれたようだった。

夕日が対岸の山影に沈んだのを確認して次の目的地へ車を走らせた。

調査不足の八幡掘り

夕日が沈んでから近江八幡市へ行ったものだから、八幡掘り近くの駐車場へ着いた時には真っ暗でどっちへ歩けばいいのかも分からなかった。
それでも何とか方向を確認し駐車場を出て商店街を右へと歩いた。

暗いとはいえまだ7時ごろなのに夜中でもないのに人が見当たらない。
初めて来たが私が住んでいる地域と比べればかなり大きな町だというのにだ。

何とか迷うこともなく八幡掘りまで来たが誰もいない上に暗くて八幡掘りに下りることもままならないのだ。

今回琵琶湖一周ひとり旅と称して自分の価値観で目的地を選び、少し調べた程度で廻ってはいるが、このように想像とは大きく異なる状況に戸惑うことも少なくなかった。
勝手な思い込みで八幡掘りの夜はライトアップされ格好のデートスポットになっていて、私のような初老の男には場違いではないかとさえ想像していたから何とも拍子抜けしてしまったのだ。
おそらく昼間に来れば情緒ある八幡堀沿いの道を歩けたに違いない。

予定変更で夜景スポット探し

八幡掘りを歩けなかったのは断念だったが気を取り直して商店街の駐車場を出た。

これから大津市まで南下してラーメンでも食べ車中泊を予定している道の駅妹子の里へ向かう予定だったが、急な思い付きで夜景の見えるところを探してみようと考えた。
夜景が見えるところと言えば山の上の駐車場だろうと想像を働かせ琵琶湖大橋を渡り比叡山方面に向かった。

私のひとり旅ルールでは有料道路は使わないことにしているが、今回の変更では致し方ない。
料金も150円程度なので大目に見たがこれも私の優柔不断な悪癖のせいだ。

結構時間を掛けくねくねと捻じれた道を比叡山方向へと走ったが夜景が見れるような駐車場は見当たらない。
やはり思い付きでは上手くいくはずもないのだろうと諦めUターンして車中泊予定地へ向かうことにした。

比叡山へ行く有料道路の手前でUターンしてしまったが、有料道路へ入って少し進めば夜景の見える駐車場ポイントがあることを帰ってから知った。

朝からの長時間運転ということもあり老眼鏡でスマホの地図を見ることすら億劫で諦めた結果なのだから致し方ない。

それでも山を下る途中にちらほらと飛び込む夜景は私の目に映えて見えた。

安心して車中泊できる道の駅妹子の郷(いもこのさと)

無料だが高速道路のような161号線を北上して道の駅妹子の郷へ到着したのは午後8時半を廻っていた。
この道の駅にはローソンが入っていることを調査済みだったことから夕食の心配もせずにここまで来たが、私の好むような幕ノ内系弁当はひとつ残らず売り切れていた。

仕方ないのでいくらおにぎりひとつとシャキシャキレタスサンドという変な組み合わせを買った。

夕食とは言え若い時のように多くは食べられないのでこの位の量が丁度いい。
飲み物は家から持ってきた水で事は足り、普段晩酌もしないから酒を飲む必要もないが翌日は4時に起きる予定なので飲酒はしない方が身のためでもある。

昨年初めて車中泊をしてから半年になるが、道の駅を始めRVパークや山の中で野営車中泊などを経験した。
その中でも最も安心して車中泊できたのが道の駅だ。

特にこの妹子の郷のように車中泊しているであろう車も多く見受けられ、他にもキャンピングカーやトラックも含めればかなりの人がこの場所で夜を明かすのは間違いないからだ。
ひとりではないという安心感は山の中の車中泊で味わう恐怖心は微塵も感じられない。

しかしその反面バイクや車の音は子守歌のように受け止める強いメンタルが必要だ。
案の定この夜も走り屋であろう「ヴーン」と言うバイクの音が夜遅くまで響いていたが、私の場合はその音を子守歌にするにはもう少し修行が必要のようだ。

早朝4時のアラームを聞くまでに目が覚めることもメンタルが弱い証しだ。

琵琶湖のサンライズスポットは危険で神秘的

早朝4時に起きたのには理由がある。
日の出の1時間前までにサンライズスポットに到着するためだ。
車中泊とは言え寝床を片付け、エンジンを掛けてA/CデフロスターをONにし、フロントガラスの曇りを取らなければ出発できない。

できれば早いうちに道の駅で歯磨きも済ませたいが口をゆすぐ水はペットボトルに入れた自前の水だ。
手洗い場とは言えトイレに併設されている洗面の水を口に入れるのには抵抗が大きいからだ。
勿論歯ブラシを洗うのも自前の水だ。
これはアジア旅行のホテルでも実践していた習慣だ。
茶色のシャワーが出るホテルで水を口に含む勇気はないので、いつもペットボトル入りのミネラルウォーターで歯磨きをしていた。

琵琶湖の日の出スポットには白鬚神社を選んだ。
妹子の郷から20Kmほどなので30分もあれば到着するだろうが、日の出時間が6時5分なのを考慮し、それより1時間前に行こうと思うとここを4時半には出発しなければならないことになる。

予定通り白鬚神社に着くと既にカメラを持って歩いている人がいた。
白鬚神社は琵琶湖に浮かぶ鳥居で有名だが、その鳥居と朝日を被らせようと思えば正面からでは無理がある。
太陽が鳥居よりもかなり左方向から登るためだ。
我先に写真ポイントを陣取ろうと早く来ている人がいるのだろうと思えたが、夕日と鳥居を被らせようと思わなければ人の少ない正面が最も適所なのだ。

特に私のように写真ではなく動画を撮るのであれば何も無理やり夕日と鳥居を被らせなくてもカメラを動かしてどちらも納めればいいだけの話しだ。

5時半ごろになれば空も白け始め一部の空が段々と赤く染まっていくのでそのあたりから太陽が登るのは容易に判断できる。

この白鬚神社の琵琶湖に浮かぶ鳥居を撮影しようとするなら前を通る国道161号線を横断しなければならないが、この横断行為が危険極まりない。
横断歩道も歩道橋も信号もないからだ。
危険な要因はそれだけではない。
6時前後の日の出時間までに国道を渡るのでまだ夜は明けてなく薄暗い。
それに加えてこの時間帯はどの車のスピードも早く、ましてやほんの少しカーブしているから横断者は命がけと言っても過言ではないだろう。

写真には車の音まで記録されないので神秘的な琵琶湖の姿しか記録されないが、動画では編集時にこの車の音を聞いただけで横断時の恐怖心が蘇るほどだ。

日の出を過ぎると雲の合い間から赤い太陽が見え隠れしたが、どうも今日は曇り空のようだ。
6時半近くまで動画撮影をしながら鳥居前の石段を陣取っていたが移動することにした。
この白鬚神社が琵琶湖一周ひとり旅の最終地点だ。

越前までの寄り道

せっかく思い切って遠出をしたのでこのまま帰るのが勿体なく思い、寄り道にしては少し遠いが越前温泉露天風呂日本海まで足を伸ばすことにした。
北陸の旅を検討している時に気になっていた温泉で、日本海を眺めながら露天風呂に入ることができる温泉施設だ。
白鬚神社からだと約80Kmで1時間半程度は掛かりそうだ。

車中泊の旅で最も注意が必要なのは二日目の運転だ。
一日目の300Km近い運転疲労に加え寝不足による居眠り運転に要注意だ。
二泊以上になれば一拍目の睡眠不足が熟睡の手助けをしてくれるので疲労感も少なくなる。

とにかく早め早めに休憩を取りながら安全運転を心掛けた。
時にはこれだけ問題になっていても後ろから煽られることもあるが、そんな時は路肩に車を止めて先を譲ることにしている。
特に峠道で後ろにバイクが見える場合は安全な場所でハザードを点滅させて先を譲るが、ほとんどのライダーは左手を上げて「ありがとう」と感謝して追い越していく。

ゆっくり走ったつもりでも予定時間はそんなに大きく過ぎずに越前温泉日本海に到着した。
あいにくの曇り空ではあるが、日本海を眺めながらの露天風呂は気持ちがいい。
朝の8時から露天風呂に浸かっているのだからこんな贅沢はないだろう。
ひと昔前なら小原庄助さんの如く怠け者の代表者のように非難されたことだろう。

ここの温泉でも「もう少し入っていたい」と物足らなさを感じる程度で湯から出た。

そして越前温泉近くの北前船主の館見学の後、度々休憩しながら家を目指した。
約200Kmで3時間は運転することになったが、無事に午後2時半ごろ帰ることができた。

結局家を出る前に給油しただけで途中の燃料補給はせずに済んだ。
今回の走行距離は592Kmで家に着いた後の給油が28.16Lで21Km/Lという好成績だった。
この旅で一泊程度ながら結構遠くまで走れることが分かったので、次も行ったことがない地域を探して見ようと思っている。

この旅の途中で満64歳になったが、後何年旅ができるのか不安も大きい。
60歳過ぎてからはそれまでに感じたことがなかった体調不安が多くなっていることも実感している。