定年退職して思い知らされる想像を超えた地域社会の洗礼・・

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地域社会での人脈作りは消極的が鉄則・・

定年退職を控えた人の脳裏には、退職後の人間関係を地域に求めようと何となく思い描いている人も多いだろう。
しかしこの時、考えた以上にうまくいかないことになるとは想像することすらできない。

何十年も同じ会社で培った人間関係と新しく作られる人間関係には大きな隔たりがあることを考えておかなければならないのだ。

ここでは往々にしてありがちな地域社会での人間関係を知って頂くために書くとするが、当然すべての人が当てはまるものではないことをご承知の上で読んで頂きたい。

サラリーマン人生で培った人脈や人間関係

サラリーマン人生を送ってきた人の人間関係はほとんどの場合仕事と関係している。
飲み友達までも仕事絡みというのが一般的なサラリーマンではないだろうか。

朝早く家を出てから仕事を熟して帰宅するまでの間、出会う人や会話などでコミュニケーションをとった人はすべてが仕事絡みということになる。

男性サラリーマンの中には、女性の部下に「妻といるより長い時間を君と過ごしている」と言って引かれる人もいるが、事実そのくらい長い時間を仕事を通して人間関係が作られている。
同じオフィスで内勤をするサラリーマンは、家族と家にいる時間以上にそのオフィスで働く人の顔を見て過ごしているのだ。

営業などで社外に出て仕事をする人は、契約のために誠心誠意相手の機嫌を取りながら人間関係を構築していると言えるだろう。

社内では何十年もかけ、社外では精一杯の努力で人脈づくりをしてきたのだ。

定年退職して地域で人脈を構築するとき

定年退職するまではもちろん平日家にいることはなく、土日も仕事仲間とゴルフや釣りなどへ出かけていた人は地域との関わりが最小限であったことに退職して初めて気が付く。

地域の人と顔を合わせるのは年に1~2度の日役や地域行事に参加した時くらいのだずなのだ。

よく考えてみると顔を知っている程度の間柄でしかなく、ややもすれば顔と名前が一致しないような人すら多くいるだろう。

サラリーマン現役当時「人間関係だけはうまくやってこれた」「人脈を構築するのは得意だ」などと思っている人は特に気を付けなければならないのが定年退職後の地域での人間関係づくりだ。

下手をすればこれまで受けたこともないような、試練とも言える洗礼を与えられることも覚悟しておいた方がいいだろう。

仕事と地域で異なる人間関係

会社では役職により上下関係が明らかで、どれだけ嫌われていようが部下は機嫌を損ねないように気遣ってくれていたはずだ。
社外ではどんな人であろうが誠心誠意気を使って尽くせたのは、仕事という大義名分によるところが大きい。

ところが定年退職後の地域社会ではどうだろう。
会社のような上下関係など存在しないのはもちろん、機嫌を取らなければならない大義名分などあるはずもない。

あるとすれば地域社会貢献度による敬意か、大金を寄付した人への崇拝くらいだ。

それでも地域社会に入り込もうと、一生懸命努力すればするほど圧力をかけられることも少なくない。
正に「出る杭は打たれる」といったところだ。

人脈づくりのために地域社会に貢献しようとして失敗した例

定年退職した次の年、地域に貢献しようと自治会長に立候補した人がいた。
自治会長や区長といった地域の世話役は、大都市でもない限りほとんどがボランティア精神で行われる最小行政の仕事になっている。

それでも昔なら名誉職として誰もに信頼されるリーダーシップのとれる人が適任とされていたが、今ではなり手がなく逆選挙によって選任し、仕方なく役に付く人の多のが現状だ。


そんな理由で当選した自治会長に地域の人が行った洗礼が、難題難問の集中砲火だった。
「生活に支障をきしているから何としろ」といった根拠薄弱な訴えの多さに、これまでにないストレスを抱えることになり体調にまで影響がでるほどとなっていった。

その会長は結局任期途中で病気を理由に退任することになり、それまで非協力的であった副会長が残りの期間を引き継いだが、難題難問の訴えはピタリと止んだとのことだ。

「自分はやりたくないが人がするなら邪魔をしたくなる」といった僻み、妬み、やっかみからくるものだろうが、それでもよく知っている人なら「まああの人なら」と許せるものなのだろう。

地域社会での人脈作りは消極的が鉄則

このようにこれまで仕事で忙しく地域にはお世話になってばかりだからと、定年退職を機に地域自治会の役員にでもなって貢献していこうと立候補すると思わぬことで反発を招くことにもなりかねない。
何十年もサラリーマンをして身に着けた人脈づくりのノウハウが、これほどまでに通用しないと思い知らされるのが地縁関係だ。

よほど打たれ強い人か「出る杭が打たれるなら打つこともできないほど出てやろう」といった気概を持った人でないと潰されてしまうだろう。

定年退職後にそんな気力を持っている人なら、何も地域社会に居場所を見つけなくてもいいはずだ。
起業でもしてもう一花咲かせることも夢ではないだろう。

定年退職すれば先ずは地域の同年代で酒でも一緒に飲んでくれる人を探すのが先決だ。
酒が飲めないなら世間話に付き合ってくれる人を探す程度だ。

世間話や酒を飲む程度といっても、それすら見つからない人も多くいることを知っておくべきだ。

理想なのは定年退職後に打ち込めるものを持ち、地域社会の人脈など意識せずに暮らせることだ。
そうしているうちに地域の人の方から声を掛けて頂き、自然に溶け込めるようになるのが最も最良な人間関係と言えるだろう。