話し好きなのに契約が取れない営業マンは読む価値あり



話し上手な人の落とし穴

皆様は相手の話しを傾聴の態度で聴く事ができるだろうか?
私は長年営業の世界で生きてきたにも関わらず、この相手の話しを聴くと言う最も基本的なプロセスが定年退職する最後まで苦手だった。
それでも何とか営業という職種で生きてこれたのは、常に「話し3分に聴き7分」という言葉を意識していたからだ。
不思議に思われる人もあるだろうが、私は意識していないと自分の思いばかりを話し続けるという営業には最も弱みとなる悪癖を持っていたのだ。

営業に向かう時は傾聴の態度を意識する

部下と営業に同行する時も、常に傾聴の態度を忘れないよう意識して注意し、帰る車の中で「今日はどうだった?」と部下に確認をとった。
しかし部下からは「今日も少し話過ぎてましたよ」と同じ返事が返ってくることが多かった。
大概の場合はお客様の方が聴き上手で上手く乗せられてしまい、時間が過ぎていくので肝心な質問を忘れてしまうことも度々であった。

客観的事実情報の聴き取り

度々忘れた聴き取りの質問は肝心な客観的事実情報だった。
例えば初めてお伺いするお客様の場合、家族の年齢や職種、それに加えて決定権者が誰なのかは営業にとって最低限必要な客観的事実情報だ。
これは新築やリフォーム営業で一般世帯へ訪問する時だけでなく、企業や役所への営業でも同じことが言える。
私はリフォームの営業をしていたので、その世帯の決定権者や職種は最も大切な客観的事実情報であった。

・客観的事実情報の例
「失礼ですがご主人はどのようなお仕事をされてますか?」と聞けば大概は大まかな客観的事実情報を頂ける。
たまに「公務員です」などと大まか過ぎる客観的事実情報の場合は、お客様に不信感など与えないように具体的な内容を聴きとっておかなければならなかった。

・なぜ客観的事実情報が必要なのか
お客様にアプローチするのに相手の専門分野が分かっていないと、信頼を失う事にも繋がりかねないからだ。
例えば新築やリフォーム営業でお客様が市役所の福祉課にお勤めされている場合、当然福祉の助成金や介護に関しての知識は豊富なはずだ。
それを知らずに少しでも間違った情報を流してしまうと、明らかに信用を失うことにも成りかねない。
例えばお客様が工場で1/100単位のクオリティーで製品を管理されていることを知らずに、現場で物づくりをしている新築やリフォームのクオリティーの違いをご理解して頂いてなかったとしたら、認識の差が生むクレームとなって返ってくることも往々にして考えられることだ。
実際に全国でこのクオリティーの認識の違いによるクレーム事例は後を絶たないのが実情だ。

先入観や思い込みが営業の邪魔をする

今までの記事でも書いてきたが、先入観や思い込みほど営業の弱みとなることは他に例を見ないないほどだ。
例えばリフォーム営業で、どこから見ても手を加える要素がないほど管理されている家や住宅街を見て「この家や住宅街にリフォームのチラシをポスティングしても需要はないだろう」と先入観を持つのはもっての外だ。

話し三分に聴き七分

営業現役時代にいつも心掛けていた「話し3分に聴き7分」は退職してからも使っている。
大切に思う相手に不快感を与えないようにコミュニケーションをとるのに欠かせないセオリーだからだ。
話し3分は主に客観的事実情報の質問に当て、聴き7分は傾聴の態度を忘れないようにしている。
単純に見える聴き7分の傾聴の態度も簡単ではない。
相手の目を見ながら聴き、時にはうなずき、「なるほど」とか「そうですね」など合いの手を入れなければならない。

当然私は今、営業ではないので誰と話す時も「話し3分に聴き7分」を意識している訳ではないが、話し好きなのに契約が取れない営業マンには間違いなくお薦めのセオリーだ。
自分の思いを100%相手に伝えようとする営業マンに契約のチャンスは訪れないのだ。

熱い思いを100%出し切っていいのは企画やプレゼン、集客に当たる段階だと言うことを知っておいてほしい。
例えば不特定多数の人に伝えたい時や、会議やミーティングで自分の意見を通したい時は熱い思いを100%出し切ってもいい。
しかし1対1で相手を説得する時、相手の考えも分からず自分の思いを100%出し切ることの危険性は冷静に考えれば見えてくる。

例えば相手の好みや要望を知らずに、自分が絶対だと思う内容をいくら熱く提案しようと伝わることはないのだ。
それこそが先入観や思い込みの塊に過ぎない。

「話し3分に聴き7分」を実践し、相手の好みや言葉にできない欲求までも聞き取ることができていたなら、その提案は直ぐに受け入れて頂けるだろう。
特に人の欲求は言語化できないことが多いと言われているが、傾聴の態度なくしてこのお客様の欲求を聴き取ることは不可能なのだ。

今話題になっている政治家の失言も、相手の欲求を無視して自身の思いを100%押し付けようとした挙げ句の失態だ。
言葉そのものが仕事の価値に繋がると分かっている政治家なら、このような失態は侵さないだろう。

営業トークに欠かせない集中力

このような「話し3分に聴き7分」といったセオリーで客観的事実情報を取得するための質問の仕方を考えたり、言語化できない欲求までも聞き逃さない傾聴の態度には集中力が必要だ。
別のことを考えながら相手の欲求を聴き取ることなど出来るはずもないが、通常の営業マンならこの集中力を持続できるのは1時間以内だ。
しかも相手が「もう少し話していたい」とか「この人とならまた話したい」と思っている間に会話を終わらせることも「話し3分に聴き7分」という営業セオリーに加えておきたい。

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