想像することを忘れないでほしい!

Noé CalderónによるPixabayからの画像

想像力は失われつつある

私たちは想像しなくても何の問題もない時代に暮らしているが、果たしてこれからもそれでいいのか疑問に感じることがある。
自分で言うのもおこがましいがあれだけ想像するのが好きだと思っていた私も「最近想像しなくなったなあ」と感じている。

いや想像しなくなったのではなく、想像できなくなっているのかも知れない。

想像できなくなった訳

60年も生きていると知覚に与えられた情報は膨大で、もうこれ以上知らないことはないのではないかと思えるほどだがおそらくそれは錯覚だろう。
スマホやパソコンでは、興味があることを一度検索すれば次から次へと関連情報が目に入るように仕組まれている。

それらの情報は自ら想像しようとすることを阻止するかのように先手先手で送られてくる。
まるでAIによって思考をコントロールされているような状態に思えてならない。
最近では朝起きてスマホを見た途端、ニュースまでもが自分の興味に合わせた内容のものを優先して目に入るように自動化され映し出されるが、これらも自ら設定したわけでもどこかの会社と契約したわけでもない。

Twitterやインスタ、Facebookからは頼んだわけでもないのに、あらゆる人の私生活や思いまでもが写真や動画を伴って送られてくる。
ましてやFacebookの設定を怠れば自分の誕生日さえも頼んでもいないのに拡散され多くの人に気を遣わす羽目になったりもするが、そんなことも想像するより先に実行されてしまっているのだ。

今後5G(第5世代移動通信システム)が普及すればこれまで以上に想像しなくていい時代がやってくるだろう。
5Gで送られてくる映像情報は正に全てが一目瞭然の世界に違いない。

もう新聞やブログのように文字で表現する時代は終わりを迎えるのではないだろうか。
そうなれば私たちが想像することは特殊な能力となっていくだろう。
時代はどんどん人間から想像という能力を奪って進化するように思えてくる。

想像を意識する時代

スマホもパソコンもなかった時代はと言ってもまだ30年も経っていないが、想像することは人間の本能だったはずだ。
その頃の思考順序は想像してから知覚するのが普通だった。

欲しい物があれば先ずは想像が先行するのが当たり前だ。
例えば旅先のお土産屋さんでオリジナルの小物入れに興味を引けば、自分でも作ることが出来ないか想像する。
材料の布などはどこで買えばいいのか、ミシンが必要ならどんな機能が付いてどのくらいの金額で手に入るのかなどだ。
「自分ならこんな風なデザインに仕上げる」といった完成までも想像を膨らませることになる。

ところが今は想像するより先に検索して答えを出してしまう傾向が強い。
想像するのは「布製ポーチ」「ポーチ作り方」「ポーチ自作」「売れ筋ミシン」などの検索キーワードくらいだ。
そして一度これらのキーワードを入力してしまうと「この人は布製オリジナルポーチとミシンに興味を持っているんだ」という情報がコンピューターによって認識されてしまうことになる。

次からはパソコンを開くたびにオリジナルポーチやミシンの写真付き広告が目に飛び込んでくることになり、とても想像を働かすような環境には至らない。
その結果「こんなに安くでお洒落なポーチが手に入るならミシンを買うまでもない」となりクリックで済ませてしまうことになる。
自分で想像するより先に想像以上の情報を視覚から取り入れてしまった結果だ。

もし想像を働かせてオリジナル作品でも作ろうとするなら、目に入ってくるものを遮り意識して想像しなければならない時代なのかも知れないと言うことだ。

想像する人と想像力が錆びつく人

どうも気付いている人は少ないようだが、意識して想像している人達によって世の中がコントロールされ、想像しなくてもいい世界が作られているように感じる。

「もう想像を膨らませて考えるのは止めましょう」「これからは人工知能があなたに代わって想像し答えを導いてあげますから」と言われているようだ。

人間の本能だと思っていた想像力は使わないと錆びつくのが思いのほか早いと感じている。
特に最近のスマホに支配された人の想像力低下が心配だ。
何もこれは他人事ではない。
私自信も誰より先に支配されているのかも知れないのだ。

想像しない生活が身に付き考えることにエネルギーが必要だと感じるようになれば、それはもう錆びかけている証しだろう。
想像したくても想像できない環境と錆びついた頭は元に戻すことも簡単ではない。

「スマホは命の次に大切だ」と思っている人は特に注意しなければならないのは明らかだ。
最後には想像力を全て失い人生までもコントロールされて生きる羽目に成りかねない。

既に人の痛みを想像できない人が増え、マスクの買い占めや感染者への偏見までも増えている。
そして自分の未来を想像できない人が、間違った行動を繰り返し感染率を上げる結果に繋がっているようだ。

今ならまだ遅くはない。
意識して想像を膨らませばスマホ依存の環境から抜け出すことができるだろう。