60歳からの海外旅行価値


定年退職後の自由な時間は使ってこそ価値があるものだ。
お金をどんなにたくさん持っていても使わないのなら貧乏なのと同じように、自由な時間も使わなければ束縛されているのと何ら変わらない。
そのように時間とお金を使うことを正当化するのは、無収入の現状では今後の生活不安が頭をよぎり、貯蓄を削って旅行をする事に抵抗を感じるからだ。

今回はカンボジアのアンコールワットに行ったが、使った時間とお金以上の価値は十分にあったと実感できる。
60年以上生きてきたが、このたった6日の旅行でいくつもの初体験をし、多くを学ぶことができた。
この初めての体験こそが自信へと繋がり、旅行の価値へと生まれ変わる。
だが初めての経験を多くしたいなら多くのお金を使ってはならない。

5泊6日の旅行に2ヶ月以上の準備時間を掛け、旅行会社のツアーには申し込まずに出かけたカンボジアであった。
この旅行で使ったお金の合計は14万円程度だったが、十分なお金を使わなかったからこそ経験できたことが多くあった。
例えばホテルを予約した時、25ドルでオプションのタクシー送迎を予約しなかったから初めてPassAppというアプリを使ってタクシーを呼んだ。
初めて使ったので戸惑ったが、シェムリアップ空港からシェムリアップ中心部のホテルまで約10Kmを3ドルで交渉なしに行く事ができた。

また、関空で手数料の安い両替所を調べていた時、KIX-ITM CARDという年会費無料カードを発行していることを知り、丸6日間置いた関空の駐車場代が25%引きで7,700円と格安になったのも、人任せにせず自ら調べた結果だと満足している。

カンボジアで初めて交渉して乗ったトゥクトゥクもアンコールワットの遺跡群を3日間とトンレサップ湖までを加え、更に帰りの空港まで含めて75ドルでお世話になった。
5日間共に行動したこのトゥクトゥクの運転手(27歳)とは、日本に帰った後もラインで遣り取りするほどの仲になっている。
このトゥクトゥクの運転手を通して、今のカンボジア事情を一般のツアー観光客以上に深く知ることが出来ただけでも私の目的は果たされたと言っていい。

初めて利用した中国南方航空も、税金及び手数料込みでカンボジアまでの往復チケットが1人45,430円で、しかも中国広州でのトランジット待ち時間が往路3時間25分で復路が1時間25分と金額の割にこの上なく短い条件であった。
これらは、たまたま好条件だったのではなく、一番いい条件のチケットを探し、そのチケットに行程を合わせたのだ。
中国南方航空は、LCC(ローコスト・キャリア)ではないので機内食も通常通り便ごとに提供され不満なく利用できた。

しかしいいことばかりではない。
アンコール遺跡群を廻って1日2万歩以上歩いた足腰の筋肉は限界を迎えていた。
若い頃とは違い、60歳を超えた疲労感は次の日の自信も無くしてしまうほどだったので、蘇らせようとマッサージを受けたのだ。
遺跡の蹴上げの高い石段を上り下りした疲労感は思考まで麻痺させたのか、そのマッサージ店での警戒心を緩ませていた。
アンコールワット遺跡群を3日間廻り、その都度同じ店でマッサージを受けていたが、3日目に被害に遭った。
カバンを後ろの台に置き目を閉じてマッサージを受け、終わったので支払いをしようと財布を開けた時、直ぐに20ドル札4枚が抜き取られている事に気が付いた。
道を挟んだ前のレストランで食事をして支払いを済ませた直後なので、このマッサージ店で抜き取られたのは明らかだった。

しかしこのような悲しい出来事も一つの経験として捉えれば旅の価値と変えることができるだろう。
旅は人生の縮図とはこのことで、いい出会いもあれば悪い出会いもある。
たかが6日の旅行でいろんな出会いがあり、思いやりの心や喜び、心配や恐怖心、そして怒りまでも経験することができた。

そしてこれこそが旅の醍醐味であり価値なのだと実感している。