60歳から始める楽器

60歳過ぎれば趣味を楽しむ時間を増やしたいと考えた人も多いと思う。
その趣味も今から作る人も少なくないはずだ。
そんな人には楽器の演奏をお勧めしたい。
若い頃経験している人も、まったく初めての人にもお勧めできる理由は、認知症予防の脳トレとして最も効果を期待できるからだ。

楽器選びの基本は一番好きなものでいいと思うが、とにかく継続しないと意味がないので、いろいろある楽器の特徴などを紹介しようと思う。
楽器の種類を大きく分ければ、鍵盤楽器、管楽器、打楽器、弦楽器となる。


目次

1. 鍵盤楽器

2. 管楽器

3. 打楽器

4. 弦楽器

1. 鍵盤楽器

ピアノは通常88鍵盤で構成され、230本の弦をフェルトで出来たハンマーによって叩き、振動を伝える構造になっている。
ピアノは鍵盤を押すというより鍵盤で叩くというイメージが相応しい。
そのため見た目以上に背筋や腕力も必要で、60歳から始めるには体力のリスクが大きいと思われる。
特に利き手の3本指以外の負担は大きく、腱鞘炎などに注意が必要だ。
購入してまで始めるとなると、高価なので後に引けないようになってしまってからでは後悔してしまう事になる。
その点エレクトーン(ヤマハの商標)などのオルガン系の方が力を必要としない分、お勧めなのだが、こちらも買うとなれば高価なので、今現在家にあることを条件に始めるのがいいだろう。
ピアノもエレクトーンも独学できなくはないと思うが、最初のどのような物か分かるまでは教室に通う方が賢明だ。

エレクトーンはコード理論なども早くから学べ、ポピュラー音楽中心に練習できるから楽しいが、足の鍵盤も操作する技術が要求されるため、60歳から学ぶ楽器としてはハードルが高い方だ。
しかし鍵盤楽器はリズム、ハーモニー、メロディーの音楽の3要素を一人で演奏できる楽しさが魅力なので学ぶ価値も高い。

因みに普通のおじさんがピアノで、ショパンのノクターンやベートーヴェンの月光だけを弾きこなせる人は結構いらっしゃるようだ。

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2. 管楽器

管楽器はクラリネットのようなリードの振動によって音が出る木管楽器と唇自体の振動で音が出る金管楽器に区別される。
クラリネット、サキソフォン(サックス)、オーボエ、フルートなどの木管楽器はその構造上、リードは無いが空気自体が振動して音が出るフルートや、1枚リードが振動するクラリネット、サックス、2枚リードが振動するオーボエ、ファゴットなどあるが、共通しているのは音程を操作するキーが多い事だ。
多くのキーを操作する技術と空気をコントロールする技術が必要になる。

鍵盤楽器とは違い単音楽器なので、メロディーを中心に演奏するが、練習していて楽しいと思えるまで上達するのには時間がかかる。
押さえれば音が出るエレクトーンに比べれば、音を出せるまでにもかなりの時間が必要で、途中で挫けて投げ出す可能性は高い楽器である。
トランペットやトロンボーンのような金管楽器は木管楽器以上に時間が掛かるので、管楽器の習得には一人ではなく仲間を作ることが継続のカギとなるだろう。

管楽器のメリットは普段使わない顔の筋肉を鍛えることにより、フェイシャルフィットネス効果が期待できることだ。
現在76歳になられるトランペット奏者の日野 皓正さんを見ればその効果は一目瞭然だが、顔の筋肉があそこまで鍛えられること自体不思議なほどだ。
もう一つメリットを挙げるとすれば、息を出して音を出す、呼吸をコントロールする楽器のため、ヨガ効果が期待できる。
深い呼吸をすることでストレスを改善し、免疫力を向上させ、その上腹筋効果で脂肪燃焼効果も上がる。

管楽器の最初の練習は先ず音を作るところから始まるので、ロングトーンのような地味な訓練を長く続けなくてはならない。
最低でも1日1時間以上は練習に当てるくらいの覚悟は必要となるだろう。

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3. 打楽器

打楽器とはドラムスやパーカッションの事だが、一番の問題点は練習場所だ。
それを問題にするなら管楽器も同じだが、音が大きいのが練習の最大のリスクになる。
少し高価だが、電子ピアノと同じように電子ドラムという商品を使わないと、普通の家ではリアル打楽器の練習は無理がある。
打楽器は叩けば音が出る楽器なので、唯々リズムを練習することになる。
この楽器も地味な練習を続けなければならないので出来れば仲間がほしいところだ。
他の楽器とアンサンブルしてこそ、その楽しさを実感できると言っていいからだ。

しかし最近、認知症予防の観点からリズム脳トレなどのエクササイズと言う物が人気を集めている。
そう考えると60歳から始める打楽器は意義がありそうだ。
確かにドラムスは両手両足を一人で複雑にコントロールしなければならない。
長い訓練によって4人の人格者が存在するかのような動きも体得できるから、認知症になる暇も無くなるだろう。

楽器やスティックを買う前に一度試してほしい。
スマホのメトロノームアプリで♩=90に合わせて、♩左手♩右手♩右足と順番に膝なり床を叩いてみる。
メトロノームと表裏一体に合わすことが条件になるが、頭の中で1、2、3、 2、2、3、 3、2、3、 4、2、3、~ 8、2、3まで叩くことが出来たら徐々にメトロノームのスピードを上げていく。
結構難しいが脳トレとしては、頭と体を同時に使うので効果が上がりそうだ。

他の楽器も同じだが上達してこそ楽しいと感じることができる。
打楽器の場合はリズム感が良くなったのを実感できるようになって初めて楽しいと感じることができる。

リズム感を養う最も効果的で最短なトレーニングがチェンジアップ、チェンジダウンだ。
メトロノームに合わせて1日1時間1ヶ月続ければ効果を体感できると思う。
♩♩♩♩/♫♫♫♫/8部3連符/♬♬♬♬♬♬♬♬/こんな感じだが最初は1拍の最初の音にアクセントを付けて練習する。

完全にメトロノームとシンクロできるようになってからアクセントを外していく。
アクセントを外すと急に難しく感じるのはまだまだトレーニングが必要という証しだ。

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4. 弦楽器

弦楽器にはバイオリンやビオラ、チェロやコントラバスもあるが、こちらは余程好きでない限りお勧めできない。
60歳から始める楽器としては、継続して上達するのが最も難しいと思われる節がある。
ましてや独学するにはハードルが高すぎる。
しかしギターなら若い頃に経験した人も多く、60歳からの趣味としては一番入りやすいのではないだろうか。
購入しても安価な商品も多くあり、どんな音楽ジャンルも大概対応できる。
しかもピアノと同じくリズム、ハーモニー、メロディーの音楽三要素も演奏でき、引けば音が出るから、管楽器のような地道な音作りは省ける。
そして独学する教材は溢れているし、目標になる動画もいくらでも探すことができる。
練習を始めてから楽しめるようになる時間が早い楽器で言えば、ギターが一番なのではないだろうか。
それ故の落とし穴もある。
直ぐに楽しめるまでになるが、目標を絞らないと上達しないまま時間ばかりが過ぎていく。
そして小さな壁に阻まれても直ぐに心が折れて、辞めていく人が多いのもこの楽器なのだ。

60歳から楽器を始める目的を、ただの趣味だけではなくて、認知症予防の脳トレを含めると目標も高まり継続する意義も深くなるのではないだろうか。