60歳から始めるドラム

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ドラムの反復練習は脳に心地いい刺激を与えてくれる

60歳過ぎてからドラムを始めるには練習が大変と思うが、意外にこの反復運動が脳に与える刺激が心地いい。
そしてドラムに限らず基礎をないがしろにせず抑えておくことが上達の早道なのは間違いない。

ドラムが楽しいと感じるのは

ドラムが楽しいと感じるのはほとんどの場合、バンドの中でアンサンブルされている時だ。
勿論ドラムソロに憧れる場合もあるが、ドラムソロを格好良く聴かせようとするならかなりの努力が必要だ。

ピアノやギターなら一人で演奏しても音楽の三要素であるリズムハーモニーメロディーを演奏できるので楽しいが、当然ドラムはリズムだけなのでマニアック感は半端ない。

しかしドラムが楽しくない訳ではない。
上手になってリズム感が上がったのを体感できるようになれば楽しさは倍増する。
そうなるまでには基礎練習を繰り返し反復しなければならないのである意味覚悟が必要だが、この単純な反復運動は意外に脳にいい刺激を与えてくれる。

最初の練習に必要なもの

本来ならドラムも音楽のジャンルや自分が求める音作りによってスティックの太さや重さ材質やチップなども選択しなくてはならないが、何も分からないなら最初は適当な持ちやすいと言った理由だけで購入すればいいだろう。

最初は楽器も必要ないが、モチベーションを上げるために購入するなら電子ドラムがいいだろう。
電子ピアノと同じようにヘッドホンで練習できるからだ。

楽器がなくても椅子の上に古い電話帳なり雑誌をタオルで巻いて練習することができる。
昔から電話帳で最初の練習してプロになった人も多くいる。
スティックと電話帳、タオルの他に必要なのがメトロノームだが、これはスマホのアプリで十分だ。

練習道具が揃うとスティックを持って練習することになるが、先ず持ち方を覚える必要がある。

スティックの持ち方

・マッチドグリップ
マッチドグリップは親指の腹と人差し指の第一関節付近でつまんで持ち、他の指は柔らかく開けておく。
そして右手も左手も同じ持ち方をするのがマッチドグリップだ。

そのマッチドグリップの中にジャーマングリップやフレンチグリップがあるが、ジャーマングリップは手の甲が上を向くのに対してフレンチグリップは手の甲が外側を向き、親指の爪が上を向く持ち方だ。
フレンチグリップはティンパニーグリップとも呼ばれている。

ジャーマングリップとフレンチグリップはどちらがいいという訳ではなくドラムスの場合はどちらも併用することになるが、初期の練習ではジャーマングリップを使うべきだと考える人の方が多いだろう。

・レギュラーグリップ
レギュラーグリップとは左手だけ親指と手のひらで挟んで持つが、親指側が支点になりスティックの中間辺りを中指と薬指の間を通す持ち方だ。
マーチングバンドでは昔、スネアドラムを肩から下げていたためヘッドが斜めになるのでこの持ち方が編み出されたのだろう。

ジャズドラムはレギュラーグリップでロックドラムはマッチドグリップと決められたように表現する人もいるが、決まりはないので自由に選べばいいことだ。

そしてレギュラーグリップとマッチドグリップのジャーマングリップはスネアドラムを演奏する時、ハウスアングルのセオリーと言うのがある。
つまり腕とスティックが家の形(腕が柱でスティックが屋根)になることが理想とされている。

シングルストロークはスティックコントロールの基礎

持ち方が決まればさっそく電話帳(雑誌)などを叩いてみよう。
シングルストロークとは右と左を交互に打つことだ。
大きな動きの中では鞭を打つように肩から肘、手首、指と支点が変わりスティックにエネルギーが伝わるイメージだ。

先ずはメトロノームを♩=60(1秒)に合わせ、4/4で一拍ずつ叩いてみよう。
できる限りメトロノームの音にシンクロすることと、全ての音が同じ音量、音色そして腕の動きを意識しながら反復トレーニングする。

数え方は4/4なので1234/2234/3234/4234/5234/6234/7234/8234//を4回繰り返す。
これは一般的な曲によくある8小節単位の曲のタイム感に慣れるためだ。

一拍ずつに慣れてくると8分音符♪で叩くが、スティックを動かすスピードは倍になるので急に難しくなる。
メトロノームのクリック音は全て右を打つときに合うようになるが、当分の間クリック音は常にアクセントを意識して練習する。

そして8分三連符になるが、クリック音に合うのが右と左交互になり更に難しいのは言うまでもない。

音符が小さくなるほど手首から指を意識することになるが、最初から難易度を上げても上達は見込めないので、当分の間は♩=60でトレーニングするのが望ましい。

ダブルストローク上達のコツ

ダブルストロークとは右右左左と2回ずつ交互に叩く奏法だ。
シングルストロークだけでは早い演奏に限界があるためそれを補うための奏法だが、後にルーディメンツというトレーニングで応用することになる。

マッチドグリップでダブルストロークを叩く場合は、中指と薬指を上手く使ってやることがコツと言える。
テンポが早くなればなるほど手首だけではスティックをコントルールできなくなる。
テンポが速くなって手首だけでコントロールできなくなると、一つ目の音は手首を使ってスティックをヘッドに向けて落とすが二つ目の音は手首ではなく中指と薬指を使ってヘッドを打つことことになる。
そうすることによって一つ目の音と同じ音量で二つ目の音を打てるのだ。
更にテンポが上がればこの二本の指だけでスティックをコントロールすることになるが、ダブルストロークのコツを掴むにはこの二本の指に掛かっていると言っても過言ではない。

レギュラーグリップの場合は左手に限って人差し指と中指の二本になる。

実際のドラムの場合はヘッドが張力を持っていて、スティックを跳ね返す力を持っているが、電話帳にタオルを巻いたものではスティックの力を吸収してほとんど跳ね返してくれない。
だがそのことが、特にダブルストロークのトレーニングに於いて上達効果をもたらしてくれることを知っておくべきだ。
ゴムを貼った練習パッドもあるが、雑誌にタオルを巻いただけのものの方をお勧めしたい。

シングルストロークばかりでは飽きるので早めにダブルストロークもトレーニングするとモチベーションが下がらない。

ドラム購入までのトレーニング

早くロックやジャズを叩きたいのは山々だが、途中で挫折しないためにももう少しの辛抱だ。
ドラムを買うまでのトレーニングスケジュールを大まかにシュミレーションしておこう。

シングルストロークのトレーニングを毎日1時間、これを1ヶ月間続ける。
ダブルストロークのトレーニングを2ヶ月目から加え、1か月間継続する。

目標はダブルストロークを♩=90のスピードで16分音符でメトロノームに合わせ、32小節叩けるようになることだ。
3ヶ月目は♩=120までテンポを上げてスティックをコントロールできるようになればいい。

しかし本来ドラムに限らずリズムで難しいとされるのは、♩=60までのスローテンポだということを肝に銘じておかなければならない。
いくら早く叩けてもスローなリズムが安定しなければ音楽にはならない。

これだけのトレーニングで3ヶ月継続できれば、楽器を購入しても惜しくはないだろう。

目的別ドラムトレーニング

シングルストロークとダブルストローク以外にもトレーニング方法はある。
目的別のトレーニング方法もあるので紹介しておこう。

・チェンジアップ、チェンジダウン
メトロノームに合わせながら段々音符を小さくしていったり、逆に音符を大きくすることで、リズム感を安定させるためのトレーニングだ。
このトレーニングはある程度スティックがコントロールできるようになると早めに取り入れることが望ましいだろう。

毎日1時間以上のトレーニングを1ヶ月から3ヶ月集中して行えば、目に見えてリズム感覚が上達したことを体感できる。
このリズム感上達の実感がドラムが楽しく感じる分岐点になるだろう。

・ルーディメンツ
マーチングなどで発展してきたスティックコントロールテクニックの一つだ。
40種類程度あってそれぞれに名前が付けられている。
最も代表的なものでシングルパラディドルがあるが、16分音符を右左右右/左右左左と打つことによって最初の音にアクセントを付けやすくするテクニックだ。
アクセントは右と左交互に来るがその前に逆の手で二つ打つことによりアクセントに余裕を持たせるテクニックだ。

ドラムセットの演奏ではタム回しや左側のクラッシュシンバルを左手で叩きたい時など、多くの場面で応用できる。

因みに私もこのチェンジアップダウントレーニングやルーディメンツは体験済みなので自信を持ってお勧めできる。

リズムの種類とアンサンブル

ロックをしたいなら先ずは8ビートから覚えることになるだろうし、スイングジャズなら4ビートは欠かせない。
一口に8ビートと言ってもその種類は膨大だ。
しかし8分音符を意識して2拍目4拍目にアクセントを入れるのが基本だ。
8ビートや4ビート以外にもボサノバやサンバ、シャッフル系など様々なリズムが存在するが、ドラムの基礎が変わることはない。

ドラムはバンドなどで他の楽器とアンサンブルをすることにより楽しさは更に倍増する。
都市部ではSNSなどでメンバーを募集していることも見受けるが、地方だとメンバー探しが難しく集まって練習する場所の問題も出てくる。

そのためメンバーを集めるまでに練習場所などの課題をクリアーしておくことが望ましい。
例えば全ての楽器をヘッドホンモニターのみで練習するとか、集まって練習する時だけ遠くてもレンタルスタジオを使用するなどだ。