中小企業経営者の定年は廃業の時か?

定年退職の決断を迫られるのはサラリーマンだけではない

大廃業時代になり廃業する中小企業は倒産する会社より多い。
中小企業の経営者は「自分の体力が続く限り」ではなく、早い段階から計画を立て時期を決めて廃業することで廃業成功者になれるだろう。

中小企業の休廃業や解散の現状

後継者がいなかったり人手不足などの理由で倒産の3倍の企業が毎年休廃業や解散を余儀なくされている。
倒産は8,000件程度なのに休廃業は23,000件にもなっているのだ。

休廃業や解散で最も多い業種が建設業でそのうちの30%程度にもなっているが、多くの原因が深刻な人手不足だ。

この休廃業や解散はあくまで法人と名の付く企業の数字だが、例えばコンビニなどFC店の閉店は含まれてはいない。

後継者がなく高齢による廃業は最も深刻で、タイミングを逃したことで廃業したくてもできない人も少なくない。

後継者がいない場合の廃業成功者への道

後継者がいるというなら問題も少ないが、後継者がいないのであればどれだけ黒字であろうが早めに廃業の計画をしておかないと問題が大きくなる。
特に借入金などの債務がある場合は完済するか、資産売却の目途を付けておかないと綺麗に廃業することが困難になる。

特に後継者がいないというだけで家族がいる場合は、家族にその後始末が圧し掛かる場合も少なくない。
もしそうならサラリーマンの定年退職と同じように、最初から年齢を定めて廃業の準備をしておくことが最善の策だ。

自分が立ち上げた会社なら最後も綺麗に閉じて人生の区切りを付けるのが理想だろう。

廃業は見極めが肝心

小さな会社ほど会社の内情に不透明な部分が多く、廃業できるつもりが倒産になってしまったといった事例も少なくない。
今廃業している会社の半数は黒字の会社のようだが実態は明らかではない。

赤字の会社は勿論のことだが、今後の経営に不安要素の大きい会社も少なくないようだ。
廃業が多いということは廃業の煽りを受ける会社も少なくないということだ。
倒産のような不渡り手形でなくても廃業する会社が顧客の場合は、その売り上げ分は減ることになるからだ。

そのため以前に比べ売り上げが徐々に減ってきている会社は要注意だ。
早ければ資産を残して廃業できたが、決断が数年遅れたことで負債の方が多くなり廃業するのが難しいといったことにもなりかねない。
資産価値も一般的には建物の価値が低いだけでなく建物がマイナス要素になってしまうことはよくあることだ。
要は資産があるからプラスを残して廃業できると考えていても、その資産が廃業の足を引っ張る場合も充分に考えられるということだ。
その意味からも廃業の方針、廃業に伴う見極めを早い時期から行わなければならないと思うのだ。

サラリーマン定年の何倍もエネルギーがいる中小企業の廃業

サラリーマンの定年退職はそんなに難しい話しではないが、中小企業の廃業はエネルギーや資金が掛かる。
M&Aなどうまくいって売れる会社ならいいが、誰も買い手の付かない会社なら尚更だ。

お金だけの問題ではなく従業員の将来のことも考えなければならないからだ。
業種にもよるが廃業届を出すだけで終わりにはならないのが普通なのだ。

個人経営の小さな会社であっても、従業員がいるなら早くから廃業の可能性や計画の話しをしておく方がスムーズだ。
だが廃業の話しを切り出すリスクが頭をよぎり言い出せない経営者は多い。
その経営者が考えるリスクとは、廃業という言葉で従業員の不安を煽ればすぐに転職されて人手不足に拍車を掛けるというものだ。

同じように金融機関にも早めに相談する方がいいことは分かっていても、廃業を持ち出すと融資ストップで回収を優先され倒産に追い込まれるのではないかと言った不安を感じる経営者が多いようだ。

だが今では地銀などで事業継承やM&Aに力を入れているところも多く、早く相談を持ちかけるほどうまくいく可能性も高くなる。

大廃業時代によって日本経済が今まで経験したことのない危機

朝日新聞の記事によれば、日本の会社の99.7%は中小企業で7割がその会社で働いていると言うのだ。
つまり中小企業が今の日本を牽引し、失業率にも大きな影響力を持っているのだ。
勿論GDPや労働生産性を直撃するのではないかと懸念せざるを得ない。

このまま中小企業の事業継承やM&Aがうまくいかず廃業が膨れ上がれば、年金などの社会保障制度にも影響を及ぼすのは目に見えている。
中小企業の経営者の多くも60歳以上の年齢になり、更に団塊世代の中小企業経営者が既に72歳になって今後引退者が急増する見込みだ。
日本の高齢化率と中小企業の廃業が大きく係っているとみている人も多いようだ。