希望はメリーバッドエンド型人生

60歳から65歳の5年が重要な訳

今まで世間に流されて生きてきたサラリーマンにとって、再雇用を受け入れることが最もスムーズでリスクが少なく常識的で安定した選択だと考える。
だが本当にそれでいいのかもう一度考えてみよう。

再雇用制度の選択

今は60歳で定年を迎え、その後は有期雇用で65歳までの5年間を1年契約で契約更新するのが一般的になっている。
今この歳を迎える昭和30年代に生まれた人たちは、社会人になった当時「この会社で働かせて貰える」とありがたく感じて入社した人が多い。
「使ってもらえるのがありがたい」といった感情は定年を迎える歳になっても変わらず、再雇用制度は恵みの雨なのだ。

契約社員になって、給与を減額されようが役職を落とされてマネージメント業務から外されようが仕方ないと妥協する人も多いだろう。
中には役職(責任)はそのままで給与だけが減額されて腑に落ちないと違和感を感じながらでも再雇用を受け入れている人も多くいる。

特に新卒入社して以来ずっと同じ会社で働き、転職の経験のない人ほど再雇用ではない別の選択肢は考えられないようだ。

「特別支給の老齢厚生年金」の恩恵

昭和30年代高卒で就職した人も少なくないが、その人たちは62歳まで厚生年金に加入すれば「特別支給の老齢厚生年金」として年額78万円も上乗せ受給できるチャンスが待っている。
厚生年金に44年以上加入したことが条件になっているが、大卒(22歳)で就職した人は44年厚生年金に加入しようと思うと66歳になるが。44年加入の恩恵を受けられるのは65歳までだ。

つまりこの44年加入の「特別支給の老齢厚生年金」の恩恵を受けたくても、大卒入社の人は再雇用契約が終了する65歳になってからでは資格はないということだ。

フェードアウト型人生

フェードアウト型人生とは最も一般的な人生の送り方で安定型と言ってもいいほどだ。
定年から延長雇用を受け入れ、その後は年金を当てにして隠居や老後人生を送るタイプだ。
収入や体力、気力や人生観までも徐々に減衰させて人生を終えると言ってもいい。

なぜこのフェードアウト型人生を選択する人が多いのかと言えば、年金や今の働き方改革など日本の社会制度がそう仕向けていると言ってもいいだろう。
理由をあげればそれだけではないが、そうすることが最も安定した不安の少ない人生に繋がることは紛れもない事実だからだ。

メリーバッドエンド型人生

バッドエンドが最悪な物語の結末なのに対し、メリーバッドエンドとは観客や登場人物の解釈によって幸福と不幸が入れ替わる物語の形式のことだ。
フェードアウト型人生に対してハッピーエンド型人生と言えないのは、ハッピーエンドが約束された人生など決してあり得ないからだ。

メリーバッドエンド型人生は60歳を分岐点にもう一度一から人生を考え直そうとする生き方だ。
そのため一度安定や一般的考えを捨てなければならない。
ゼロからか時にはマイナスからのスタートになることを受け入れる人生のことで、悠長に暇をもてあそびながら遊んで暮らす人生のことを言っているのではない。

とにかく最後までアクティブに生きることを目標にして、「生き抜いた」と表現できるような人生を想像するものだ。

人生の分岐点はあくまで定年の60歳

フェードアウト型人生で良しと決心するなら再雇用を受け入れて働くことになるが、もしメリーバッドエンド型人生を選択するなら間違いなく分岐点は60歳だ。
60歳からの5年は若い時の10年、いや下手をすれば20年にも相当するかも知れないからだ。

日本の平均健康寿命が男性で72歳、女性は74歳(2016年)であることからでも、65歳を過ぎてからの方向転換が遅いということで理由付けできる。

勿論65歳でも何の問題もなく健康で気力も維持している人は多いだろうが、あくまで結果論であってその保証はどこにもない。
しかも60代という年代は、急に老化を自覚しなくてはならないような病が襲ってきてもおかしくない年頃だ。

60歳を過ぎても心身共元気な内は「未来はまだまだ続く」と錯覚してしまうが、実は明日の命も保証されてはいないのが現実だ。

これらのことから60歳定年という分岐点は絶好のチャンスでもあり、最後のチャンスでもあるのだ。

60歳から65歳は人生の方向転換のために与えられた時間

60歳から65歳までの5年は、サラリーマンを辞めてから180度違った人生に方向転換するために使うのが好ましいだろう。

この5年を使って新しい人生を軌道に乗せるという考え方だ。
この5年間で新しいスキルを身に付けたり新しいことに挑戦して、人生の糧となるものを見つけるのだ。

5年間で軌道修正と言えば結構長い時間に感じるが、65歳になった時には考えているより短く呆気ないほどの時間でしかないと思い知ることになるだろう。

器用な人なら再雇用制度を利用して働きながらできることかも知れないが、私のような不器用な性分の者には退職という潔さがないと到底叶うものではない。

メリーバッドエンド型人生の目標

厚労省が2040年までに目標にしているのは、2016年に比べ男女共3年健康寿命を延ばすことだ。
男性で75歳、女性で77歳まで健康寿命を上げるに伴って、心身の活力が低下する「フレイル」や認知症の予防対策を進めている。

フレイルとは健常な状態から老化により要介護に移行する時の身体的問題や認知機能障害、心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む多面的な概念だという。

このフレイルこそが60歳からの人生を大きく左右する問題点だ。

メリーバッドエンド型人生を選んだなら、せめて80歳までは健康で過ごす目標を掲げてほしい。
目標を60歳の分岐点から20年は心身共に健康でいることに置かないと、遣りたいことにも悔いを残すことになりかねない。
そのためにフレイルを意識して心身に活性を与えるような行動をしなければならない。

最もメリーバッドエンド型人生の本来の目的は、お金でも出世でもなく人生を健康で生き切ることにあると言える。
自然にフレイルを受け入れ段々と死に近づくという概念がメリーバッドエンド型人生にはそぐわない。

目的のための目標であるのは言うまでもないが、規則正しい生活習慣や老化を意識した体力づくりなどはメリーバッドエンド型人生には欠かせない目標だ。

メリーバッドエンド型人生が希望

フェードアウト型人生やメリーバッドエンド型人生という言葉はこの記事で私が勝手に人生と合成して名付けただけだが、どちらの人生が正解だといっているのではない。

ただメリーバッドエンド型人生が私にとっての希望としたいだけだ。
メリーバッドエンドの意味が曖昧なところもあるが、人から見ての幸福感ではなく自分が幸福感を感じることができればそれでいいのだ。

人生は人それぞれだろうし「こうあるべきだ」などと言える根拠となるものは持ち合わせていないが、夢にも近い希望を一度でいいから追いかけて見たいと思っているだけだ。

夢や希望と言っても退職した当時は輪郭のハッキリしない感情でしかなかったが、そういった思いも時間が経つにつれて少しづつ固まってくるのを実感できるようになった。

今出来ることは、前には戻れないと分かっている時間を希望に向かって考えながら過ごすことだけだ。