60歳過ぎれば男性だけが悩まされる前立腺の病

ほとんどの原因がはっきりしていない前立腺炎

65歳以上の人から前立腺に関わる病気のことを聞く機会が多くなったと感じていた。
しかしまさかまだ62歳の自分に降りかかるとは思ってもいなかった。

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【前立腺がん検査】

突然襲われた尿道の痛み

ある日排尿しようとトイレに入った時、いつもとは違う違和感を感じていた。
排尿意欲はあるものの思い切って出してはいけない何かに脳が制御されていた。
排尿に意欲と表現するのは変かもしれないが、いつもなら積極的に行う行為であるのにこの時ばかりは「積極的に出してはダメだ!」と脳が指令を出していたのだ。
それが私の意思でないことは自覚できていたので違和感としか言いようがないのだ。

そして自分の意思に反しゆっくりと排尿を試みたが、これでは尿が出てこない。
そこで再度精神を落ち着かせ先ほどより更にゆっくり排尿に挑戦した時、尿管の最終地点近くで激痛に襲われたのだ。

激痛とは少し大袈裟かも知れないが、かなりの痛みだった。
これでは排尿意欲が削がれるのも仕方ないと思えるほどだ。
スズメの涙ほどの排尿で強度のしみる痛みに襲われたものだから、すぐに排尿がストップしてしまった。
尿意は通常以上に感じているがこれでは積極的排尿はとても無理だ。

しかたなく少しずつ少しずつ排尿に挑戦しながら終わらせたトイレタイムは10分を超えていた。

病院を決めるための比較

人にはいつも何かあれば早めに病院に行くよう勧めているが、臆病と自覚できるほど医者嫌いな性分をこの時ばかりは変えなければ辛抱できるものではなかった。
おそらく痛みがこの半分程度なら二日から三日は様子を見ていただろう。

私だけではないだろうが泌尿器科という言葉の中に、率先して行きたい要素はみじんも感じることはできないのだ。
その言葉から連想されるのは「恥ずかしい」「痛い」「不安」「怖い」「どんな診療?」「どんな検査?」などだ。

まだ経験をしたことがない泌尿器科で、どんな診療や検査が待っているのか悪い想像しかすることができなかった。
出産を経験している女性に比べ、男性のメンタルの弱さが浮き彫りにされるのが泌尿器科などの治療ではないだろうかとさえ思えてしまった。

しかしそんな恥ずかしさや不安に勝る痛みがその日の内に泌尿器科の初体験へと導いた。
都市部ではない地域に住んでいるので泌尿器科を専門とする病院を知らなかったが、パソコンで調べて見ると車移動で1時間範囲に2件の専門医がヒットした。

その中から1件に決めたのは口コミとホームページの内容、そして医師の表情だ。
今だからこそできる意思決定比較だが、ホームページで見る医師の表情は特に大事であることも感じることができた。

泌尿器科初体験

最初の強い痛みを感じた日が金曜日であったこともあり、すぐにその専門の泌尿器科クリニックへ電話すると、予約制ではあったもののその日の診療を受け付けて頂けた。
土日を待っている余裕もなくすぐにでも何とかしてほしかったので、今の痛みを大袈裟に力説して何とか今日の予約を勝ち取ったと言ってもいいくらいだ。

車でほぼ1時間掛けそのこじんまりした泌尿器科クリニックへ行くと待合い室には5~6人の患者さんがおられたがどう見ても私よりは歳をお召しになった方たちだった。
受付を済ますと「検尿をしますからトイレで尿を取って小窓へ置いて下さい」と言われ、またあの痛みを味わうことになると不安を感じた。

この時は既に腹を括っていたがそれでもその痛みが眉間にしわを寄せる原因になっていた。
時間を掛けてやっとの思いで絞り出した尿は、検尿のために渡された名前の書いた紙コップの底を何とか濡らす程度ではあったがそれが精一杯だった。

初診ということで30分は待っただろうか、その時間が嫌に長く感じられたのはその後に待ち受ける悪い予感のせいだった。

やっと名前を読んで頂き医師と顔を合わせた時、あのホームページで見た優しそうな顔をされた院長だと直ぐに分かった。

既に尿検査の結果が出ていて内容について説明を受けたが、病名が細菌性前立腺炎ということだった。
尿検査結果リストには白血球50-99、細菌+と表示されその病名の根拠であることは間違いなかった。

いよいよ悪い予感の診察が始まる

私より20歳は若いであろう女性の看護師に診察台へ横になるよう促された。
「ズボンのベルトを外して下着と共にお尻だけ出るようにして足を折って下さい」
看護師の表情に笑顔はなく、淡々とした言葉の中に患者への配慮と的確な指示が伺えた。
この時その女性の看護師が笑顔を振りまいていたとしたら、患者の羞恥心はさらに膨らんでいただろう。
そのお蔭で女性看護師への対人不安も感じることはなく指示に従うことができたが、その直後医師の手にビニール製の手袋が付けられているのを見て一瞬不安がよぎった。

案の定肛門から直接触診するための手袋であることが直後に判明することになったが、そんな不安を感じた時には既に触診が始まっていた。
私が「痛い!」と声に出したのは一呼吸もしない内だった。
「痛いですか?」と聞く医師に「はい」と伝えるのがやっとだった。
触診の最中に「残尿感はないですか?」などの問診もあり素早い診察が、その泌尿器専門分野で長年経験を積んだスキルの高いエキスパートであることが伺えた。

その後にエコー検査や血液検査のための採血や問診を受けた。

こうして泌尿器科人生初体験が終わった。
この日から数えればこの医院に通うのも5回ほどになるが、今では恥ずかしさも消え常連のように堂々と振る舞っている。

前立腺エラーの治療

排尿時の尿道の痛みは前立腺の炎症で、膀胱にまだ出し切れていない尿が残っているのは前立腺肥大によって尿道が圧迫されているのが原因していると説明を受け、更に尿道の先端が痛むのに前立腺の炎症だという疑問にも「前立腺の炎症にはよくあることです」と説明を受けた。

炎症の治療には抗生物質の抗菌薬を処方され、同時に前立腺肥大を抑える薬も飲むことになった。
お蔭であれほど激しい痛みからは4日ほどで解放され、残尿感や頻尿も感じなくなった。

最初の泌尿器科受診から1週間後、そしてまたその次の週も受診し、ほぼ正常に戻ったと感じているが最初の受診から3ヶ月になる今も月に一度この泌尿器科を訪れている。

先日最後になるだろうと確信して受診に向かったが更に一ヶ月後も来院して下さいと言われ、その理由を聞くと「念のためです」の一言だった。
既に信頼している医師とはいえ、患者を減らさないのが目的なのではという疑問を払拭することはできなかった。

決して口数が多くない信頼している専門医を疑う訳ではないが、ハッキリ質問できなかった自分にも非があるのでネット検索して調べてみることにした。
そうして分かったのが前立腺の炎症原因のほとんどは解明されておらず、慢性化する可能性もあるようだ。

薬の服用期間が短いと慢性化すると分かれば、「念のため」の説明にも納得できる。
中には前立腺の治療には長引くことも多く、根気よく治療を受けることが大切だとの記述もある。

60歳から実感する病のリスク

昨年までは年間医療費ゼロを自慢していたが、今年に入ってから慢性的な鼻炎による耳鼻科受診に始まり、肩の痛みとその後の腰痛、そして前立腺と今までに経験したことのない病院通いが続いている。

やはり60歳を境に老化の波が急に襲ってきたように感じているが、油断してその波に呑まれないように注意するしか策はない。

今回の泌尿器科のように診療を受けるにも羞恥心を含む多くの不安で治療が遅れないようにしなければならないが、自覚症状もなければ検診などをこまめに行うしかその対策はないだろう。
自分には甘いが人様には「とにかく少しでも身体に違和感を感じるならすぐに受診することをお勧めする」と伝えたい。

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