働き方改革を味方にしないとならない訳



働き方改革という言葉は2年ほど前(2016年)からよく聞くようになった。

少子高齢化などで労働力人口が想定外に減少しているので、働き手を増やしたり生産性を上げるなど政府は色んな手を使って労働力の確保に乗り出している。
日本のGDPもアメリカや中国に大きく差を開けられているので放ってはおけないのだろうが、政治家に任せっきりにしておくと痛い目をみるサラリーマンが増えるのではないかと心配になる。

急ピッチで進む働き方改革に積極的に取り組んでいる大手企業や、公務員の職場にとっては企業も従業員にもメリットがあるだろうが、何とかギリギリの所で黒字を維持しているといった中小企業では、企業か従業員のどちらかにデメリットのしわ寄せがのしかかると思えてならない。

今までサービス残業やサービス出勤で矛盾を感じていた営業職などの人にとっては、会社にサービスしなければよいだけの話しだが、工場勤務などで残業がなくなれば、それを見越した住宅ローンなどの支払いができなくなると言ったデメリットだけが迫ってくる人も増えてくる。
そのような企業では元々離職率も高く、働き方改革という名目で残業をなくしても今いる従業員の人件費を上げるとはどうしても考えにくい。
正社員の残業人件費を更に原価削減するため外国人労働者を雇い入れたり、AIの導入に踏み切るなどの目先だけを考えるのが落ちではないのか。

今まで残業代が年間で100万円以上の人はそれが極限までなくなり、そのまま年収減となって現実の生活に襲い掛かってくるだろう。

サービス残業などが多かった企業で従業員への直接のデメリットがないとは言っても、従業員の仕事量を減らして生産性まで落とすことはできないので、下手をすればその分余計に従業員への圧力が重くなりストレスが倍増するようなことにもなりかねない。

働き方改革で従業員へのメリットとしてのワークライフバランスの実現と銘打って育児や介護をしながら働ける社会が実現するとか、時間に余裕ができてスキルアップ、キャリアアップで収入もアップするなど急には信じがたい事柄が多いが、言いかえれば「働ける者は育児や介護の合間を縫っても働きに出ろ」とか「歳をとってもあなたたちに支給する年金はないので自分で稼いでくれ」と聞こえてくる。
不合理な会議や出勤なども止めて合理的に働けば時間にも余裕ができ、兼業や副業によっても収入アップが見込めるとは個人の労働時間見直しにはならないだろう。
働き方改革によって急速に変わりゆく世の中で、ついていけるのは大手企業や公務員として働いている、中でも優秀な人たちだけにならないか心配だ。

労働時間の改善で得た自由な時間も、スキルアップや副業で収入アップできるような能力が備わっているなら最初から苦労はしないと訴えたくなる。

自分を変える分岐点のチャンス
しかし国の方針を力のない個人が変えられるわけもないのなら、今がチャンスと捉え働き方改革を利用するしか選択肢はないだろう。
働き方改革で出来た時間を無駄にせず、資格取得や専門的知識の向上など価値あるものに変えて高級職に転職することを考えてもいい。
今までの自分を変えて何か好きな事に志を高く持って取り組むこともいいだろうし、余暇を利用して新しい仕事を始め、徐々にウェイトを置きかえてそちらに移行してもいい。

今回だけは、何もせずに変わりゆく時代に身を流していたのでは、働き方改革という大波に呑まれてしまうのは免れそうもない。
今までのように何とか世間の流れに乗って耐えてきた人でも、少し力を入れて漕いで方向転換しておかないと、痛い目に合いそうだ。

既に休みが増えたり残業がなくなって早く家に帰れるようになっている人は多くいるだろうが、その時間をチャンスに変えようと努力している人はどのくらいいるのだろう。
おそらく給料が変わらない人は何も行動せず、残業代が現実に減っている人は策を講じる準備をしているのではないだろうかと想像できる。

企業のデメリット
今までから離職率の高かった企業で、特に利益の出ていない中小企業や、地方の金融機関などはこの働き方改革が予想以上の危機を生む原因にもなりかねない。
魅力のない企業から若い人は容赦なく離れていき、新しく入社する人もなくなり生産性を改善する以前の問題に直面することになるだろう。

働き方改革をブラック化している企業が実践するには古い体質を脱皮するかのように大きく変えていくしか方法がないと言っていい。
生産性の上がる人材を確保したり、今いる人材のスキルアップを図るには離職率を下げ、魅力ある企業にしなければならないが、直ぐに変わらないならトップを入れ替えるなどの断行も必要になるだろう。

甘く見てはならない働き方改革
働き方改革制度の1億総活躍社会とは若者も高齢者も女性でも男性でも、障害や難病の人も一度失敗した経験のある人も誰もが活躍できる社会、要は全ての人が働いて強い経済を実現し、たくさん税金を納めて社会保障基盤を強化すると受け取れる。

少し私のひねくれ解釈が入ったが、ほぼ間違いないだろう。
ひねくれついでにもう少し付け加えるなら、自分だけの能力で収入もアップでき、時間管理やモチベーション管理能力も持ち合わせたエリート優先の制度だと感じる。

どちらにせよ人は何かをするなり働くなりしなければ生きていけないとするなら、本腰を入れて新しい事に挑戦し、自ら人生を変えていかないと誰も助けてはくれないよと、国が私たちにプレッシャーを掛けているのだ。