竹田城トレッキング

竹田城跡

天空の城、竹田城でトレッキング

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毎日家の中で悶々と過ごすことは精神衛生的にも自慢出来る事ではない。
台風第21号の関空被害によって断念した旅行計画から後、次の計画を立てる訳でもなく、来る日も来る日も趣味部屋で過ごしていた。
趣味部屋の窓からは見慣れた山がその日の景色を装っているが、私をこの部屋から引きずり出すほどの好奇心を呼び覚ますものでもなかった。

数日前、そんな私を見かねた娘が「たまには山登りでもしてみたら」と気遣ってくれた。
登山やトレッキングの趣味はなく、体力にも自信がないので考えることすらしたことがなかったが、娘の一言になぜか心が動かされた。

取りあえず天気予報を見ると次の月曜日が晴天になっている。
気が変わらないうちに決行したいので、半日程度で容易に登ることが出来る近くの山を検索してみた。
最初から頭にあった場所は外して考えようと抵抗してみたが、整備された登山道がある他の山は見当たらなく、体力的にも相応しいとここに決めた。

それが今は有名になってしまった竹田城だ。
一人で心静かに出かけたかったが、有名になってしまった竹田城ではそれも叶わないのではと思えたのだ。
しかし平日の午後であれば観光客も少ないであろうと想像できた。
そもそも竹田城の見どころは、まるでラピュタのような天空に浮かぶ城の遺跡にある。
その光景が見れるのは、夜に気温が下がった秋晴れの朝なので、暗いうちに登って雲海からのサンライズを楽しみ、遅くても昼までには下山するのが通例になっている。

昔は車でほぼ頂上まで行く事ができたが、観光客の増加で今はそれも叶わない。
標高が353mなので登山というほどの山でもないが、一応登山ルートが6か所あり、そのどれかを選ぶことになる。
家から見えるほど近くにあるため、子どもの頃には遠足で訪れたり、有名になるまでは車で何度か来ているが、大人になってから歩いて登ったこともなく、疲労予測はできないが未経験のルートを選んだ。

おそらく近隣の友人に話せば「それは登山ではなく散歩だと思う」と答えが返ってきそうなのは、登山ルートが700m徒歩で15分から20分と書かれていたことだ。
たった半日にも満たない、しかも家から頂上まで見渡せる有名な観光地に向かうのにルートを調べ、カメラなど持ち物の点検や山ヒルのリスク対策など、自分でも異常ではないかと思えるほどの周到さは悪癖としか言いようがない。

この竹田城の有名になる切っ掛けがグーグルのCMだけあって、山頂を含め4か所の登山道もストリートビューによって確認することが出来る。
市の職員が撮影機を背負い歩いて廻った成果だろう事が伺える。

麓の無料駐車場に車を止め、表米神社登山道入り口までは数分で難なく歩けるが、表米神社参道の石段を抜け、山道に入ると平坦な所は一切なく丸太などで整備された階段が永遠と思えるほどに続いている。
ルート案内では700mで15分から20分とあったが、このところの運動不足による体力不振はごまかすこともできず、途中で10分程度の休憩を2回取り何とか城の石垣までたどり着く頃には登り始めて40分近く経っていた。
表米神社参道の石段と丸太で整備された登山道。
    
一人なので体力的に無理なら途中で引き返すことも考えていたが、諦め癖を恐れて登り切ったといったところだ。
滅多にない達成感が石垣までに設けられた観覧料受付処で、1回500円ではなく年間パスポートの1,000円を支払ったほどに気分が高まっていた。

平日の午後ということで観光客もまばらだと予測していたが、60代の仲のよさそうなご夫婦や若い男性のグループ、家族連れや一人旅風の若い女性など想像以上の見学客で賑わっていた。
驚いたのは英語圏の国から来たであろう若いカップルや、10数人の台湾からの団体客までタイムラプスを撮影していた私の後ろを通り過ぎていった。
しかも70代であろう案内ボランティアの男性が、「Nice to meet you」とか「Have a nice day!」などと声を掛けているのだ。
普段は外国人など見たこともない田舎町のローカルな観光名所がいつの間にかグローバル化されていた。
眼下には竹田城下が見え、そこには休憩できるベンチが設置してある。
    
2時間近く写真を撮ったりベンチで物思いにふけった後、駅裏登山道と言われているルートを下山したが、こちらは表米コースより更に蹴上(階段の段差)の高い階段を降りる事で膝関節にかかる負担は大きく時間を要した。

たった半日の、友人には散歩と言われそうな登山ではあったが、体力の衰えも自覚でき、自然の中で心をリフレッシュすることができたのは意義深いと感じる。
このお出かけは、まるで海外にでも行くかのような思い切りを要したが、年間パスを買ったので次からは晴れの日を選んで気楽に出かけようと思っている。

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